神奈川の海・釣り物語(ハナダイ釣り)

ハナダイを知る

ハナダイとマダイの見分け方


 一目瞭然、誰にでも分かるのが尾びれ。外縁部に黒い縁取りのあるのがマダイだ。ハナダイにはそれがない。

 体高はハナダイの方が大きい。だから、マダイに比べて、やや平べったい感じを受ける。
色は、マダイが朱色に近い赤だが、ハナダイは奇麗なピンク色をしている。どちらかと言うとハナダイの方が色は奇麗だ。

 鰓蓋に血の色が透けて見えているような縁取りがあるのもハナダイの特徴だ。別名のチダイはそこから付けられた呼び名のようだ。
              

ハナダイの生息場所はマダイより浅い?

 三浦半島沿岸の海では、ハナダイ釣りの対象になる水深は冬場でも50〜60m、それ以外のシーズンは30m前後ともっと浅くなる。冬場のマダイ釣りは水深100m前後を狙うから、むしろマダイの生息圏は、より深場まで及んでいるようにもみえる。

 ハナダイのポイントでマダイも釣れる。特に、秋ダイのシーズンは両者のポイントがピッタリ重なる場所もある。三浦海岸の下浦沖がそうだ。

 しかし、マダイの好ポイントにもかかわらず、ハナダイはまず釣れたためしがないという場所もある。秋口にマダイ狙いで賑わう久里浜沖の30mダチのポイントがそうだ。

 鴨居沖から湾奥にかけてはタイ類のコマセ釣り(アミコマセ)が自粛されている。しかし、コマセにイワシのミンチを使用するアジ釣りでは、外道のタイ狙いをしても大目にみてくれる。

 走水沖では、アジ船に結構マダイやクロダイが掛るのでタイマニアが出没する。この海域では、活きエビを餌にするシャクリマダイが盛んだが、外道に良型のハナダイが結構混じる。
 チャリコと呼ぶハナダイの幼魚は、湾内の白ギス釣りの外道で時々釣れることがある。夏場に限っては、図鑑に記載されたように群集する習性はないような気もする。

春と秋に群れをつくる

 東京湾のハナダイの産卵期は、晩夏から秋にかけて行われるようだ。この時期は、大型が水深30m前後の浅場に、小規模ながら群れを形成する。産卵前のも産卵後のも釣れるから、この近くが産卵場である可能性が高い。30cmを超す良型が揃うから釣り味は最高だが、味は落ちる。

 何年か前の話だ。5月頃、金谷前のアジ場でハナダイの大釣りが続いたことがあった。私も早速駆けつけてみた。その時は既に群れが移動した後だったのか、30尾ほどしか釣れなかった。この予期せぬ訪問者は、結局一ヶ月ほどで居なくなってしまった。

 湘南片瀬港の船宿の主人に聞いたことだが、江ノ島あたりでも同時期に大挙してハナダイが押し寄せてくることがあると謂う。そんな時、定置網にはハナダイが何百キロと入るそうだ。この時、船宿の主人は「乗っこみ」と謂う言葉を使った。「江ノ島周辺は群れの付き場がないので、釣るのは難しい」とも言った。


水温が13℃を切ると口を使わない

 冬場の好ポイントは、久里浜アシカ島周りとそこから金谷方面に走った航路内と、更に下浦沖に2個所ある。
航路内は水深が50m前後で、非常に潮通しの良いところだ。ここでは、小型ながらもマダイが結構混じる。他のポイントは3個所とも、水温が一番低下する2月、3月でも水深は30m前後と浅い。

 この時期は、水温13℃が攻防の分かれ目になる。水温が13℃を切ると、ハナダイはパッタリと釣れなくなる。特に水温が急変した直後が最悪だ。それでも、2、3日もすると水温に慣れて、少しは口を使うようになる。
 時化後も各段に食いが落ちる。潮色にも敏感で、濁った潮よりは澄んだ潮を好むようだ。冬場は中小型が多いが、脂が乗り最高に美味しくなる。

ハナダイは上へ上へと誘う

 ハナダイは上に上がっていく餌を追いかける習性があると謂われている。釣り始めは底近くでアタッていたのが、そのうちコマセが効いてきて魚の活性が高まると、10mも15mも底を切った宙層のタナで食い出すようになる。

 時には20m以上も底を切ったところがアタリダナになることさえある。イサキと同様上のタナほど大物が釣れる傾向がある。
 タナ取りでいつも悩むのが、大型狙いか小型の数狙いで行くかである。


コマセの撒き方が肝心

 コマセシャクリ釣法では、コマセ一回の詰め換えでタナの範囲を2回探るのが基本だ。底から3〜15mを、小型両軸リール一巻き分(50〜75cm)づつ巻き上げながらシャクリあげてくる。この動作を2回繰り返したら仕掛けを巻き上げてコマセの詰め換えをする。

 巻き上げた時、コマセカゴの中にコマセが2割ほど残っているのが理想的だ。シャクリあげる時、コマセがポロポロと出ていないと集魚効果はない。空になったコマセカゴをぶら下げていくらシャクって見ても、ハナダイは釣れないものだ。

 中には一回でコマセを使いきってしまう人もいる。これの方が集魚効果は大かもしれないが、忙しすぎるのが難点だ。

 人それぞれだが、こんな人がとなりに座った日には、煽られっぱなしでたまったもんじゃない。ましてや、彼だけがバンバン釣れるようだと、自分の獲物が横取りされたようでイヤな気分になったりする。
 潮の流れ、水深、シャクリ等でコマセの出具合が変わるので、臨機応変にコマセカゴ゙の放出孔の穴の大きさを調整してやる。

釣り座と釣果の関係は?

 何の魚でもそうだ。日の出や日の入りの時刻は朝マズメ、夕マズメといって魚の食いが一番立つ時だ。マルイカも例外ではない。出船時間の関係で乗合船では朝マズメを釣るのは難しいが、夕マズメにかかる時間帯は狙うことが出来る。


 日が傾く3時ごろになると、漁師の小船がマルイカを狙って何隻も出てくる。それを見ると釣れる頃合いが分かる。漁師の船が出る日はイカの乗りが好調な時だから期待できる。


 我々は帰港間際の30分からせいぜい1時間が勝負だ。この間は大抵入れ食いになる。船頭がそれまでわざと出し惜しみしていたのではないかと勘ぐるぐらいに良く釣れる。


 私は釣りから待つことを学んだような気がする。魚は釣れない時は何をしても釣れない。ひたすらその時を待つしかない。所謂潮時である。我々の人生と良く似ている。そんな時に無理をしたり、小細工をしたりすると命取りになることがある。


その日の当たりの色がある

 魚は色盲だと謂われている。しかし、魚が感知しているのは色ではないかもしれないが、ウイリーの種類に敏感に反応するのも事実だ。
 定番はダークグリーンだ。夏冬通して安定した釣果が期待できる。特にマダイに対しては万能色で、絶大な効果をを示す。ピンクも一般的だ。意外に効果的なのが蛍ムラと呼ばれる蛍光紫だ。
 その他変わったところではイエローがある。3月、4月の終末期のハナダイには、このイエローが結構効果を発揮する。下バリにはダークグリーンを配し、後は適当に配色する。
 ハリ数は4〜6本が標準だ。その日のアタリバリ(色)の傾向がつかめたら、その色を増やしてやる。ウイリーの色は本来カラーナンバーで表示される。しかし、販売元で勝手に名称を付けていることもあるので注意が要る。

若潮に大釣りが

 過去の釣り日記や新聞の釣況欄を見てみると、若潮の時が一番大釣りの確立が高くなっている。漁師に話を聞くと、刺し網などの漁獲にも、そのような傾向があるようだ。

 小潮で潮の動きが遅かったのが、若潮の頃には潮が通るようになる。それにつれて、腹を空かせた魚の就餌活動が活発になり、行動半径も広がるからかも知れない。

アタリはコッツン
三浦半島沿岸部ではウイリー仕掛けのコマセシャクリ釣法が主流だ。この釣り方でも、アタリはマダイとハナダイでは随分違う。マダイはゴツゴツときて一気に竿を絞り込むが、ハナダイはコツンで終わることが多い。だから、ハナダイの場合は、コツンときた瞬間に竿先をあおり、アワセをくれてやらないと逃げられてしまう。

 ハリ掛かりさせてしまえば、引きはマダイもハナダイも同じだ。三段引きと称される、竿先が水中に突き刺さるようなシャープな引きが堪能できる。

 この微妙なコツンと謂うアタリが取れるのは、相当海の条件が良い時に限られる。特に、近年はハリスの長さを長くする傾向があるので、余計微妙な前アタリが取れにくくなっている。

 コマセシャクリ釣法が普及するに至って、ハナダイの釣果が著しく伸びている。コマセシャクリ釣法だと仕掛けが静止する時間はほんの一瞬だ。大抵いつも仕掛けが動いていて、仕掛け自体にタルミがほとんどない状態にある。

だから、エサを咥えた瞬間に異変が手元に伝わるし、即それがアワセにもなっている。ハナダイの就餌行動にあった合理的な釣り方と謂える。
アワセが半端だと途中でバレる

 アワセは確実にした方が良い。口の周りが硬い魚だ。歯を食いしばり、針を咥えただけで釣れあがってくることもまれにある。だから、途中で糸が緩んだ拍子に、ハリを吐き出して逃げてしまうことがある。
 船頭は船の位置を直すために、釣りの最中でも船を小刻みに動かしている。時には糸がかなりの強さで引っ張られることがある。唇の脇にチョコンとハリ掛かりしていることがあるが、こんな場合は身切れしてバレてしまうこともある。運が悪かったと思って諦めるしかない。

胴付き釣りは仕掛けをたるませる

 
外房で行われるエビ餌のドウヅキ釣りでは、エビを尻掛けにして一気に仕掛けを底まで降ろし、着底したら少し糸フケを出して仕掛けをタルマセ気味にする。食い渋りの時は、このタルマセが効果を発揮する。
 誘いは、オモリが底を叩く状態で竿先を上下させるだけでいい。

エサだけ取られることがあるので、何度かアタリがあってもハリ掛かりしないようだったら仕掛けを巻き上げ点検をすることだ。

 コマセなしの釣りでも、日によってはタナが上ずることもある。自分にだけ釣れないような時は、底から10mくらいの間を探ってみる。
 頻繁に根掛かりするようなら常に1から2m底を切るようにする。

シャクリ方が釣果に関係するか?

 初心者はシャクリ方に異常な神経を使う。中途半端なベテランは、竿の調子に対して過敏になる。船上で、2、3万円もする竿を、二本、三本と、取っ換え引っ返している人を時々見掛ける。

 しかし、数を上げている釣り人がみなそれぞれ、シャクリ方も竿も違うから、そうそう神経過敏になる必要はないようだ。

それでもシャクリが気になるなら

 私自身の経験から話をすると、最初の頃はシャクリの最中にぐっと重くなるパターンが多かった。当時は、シャクリの幅が1m強と大きかったし、止める動作もあいまいだった。

 このやり方で釣っていた時は、せいぜい釣れても船中の平均ぐらいだった。アタリの回数が少なかったし、アタリがあってハリ掛かりする確率が非常に低かった。

 その後、竿の弾力だけを利用して50cm前後の小幅のシャクリ方に換えたら、格段に釣果が上がるようになった。この釣り方だと、アタリはしゃくっている最中ではなしに、竿が静止している間に出る。シャクッたら2から3秒そのまま竿を止めて待つが、大抵この時にコツンとアタル。

 或いは、再びシャクリ上げようと竿先を跳ね上げた瞬間に、グッと手元に重量感が伝わることが多い。ハナダイが余裕を持って餌を追いかけるピッチとスピードで、そしてコツンと来る微妙なアタリが取れるシャクリ方であれば良い。

 長くやっていれば、自分流の型が自然に身に附くものだ
ツイテない日は基本に忠実に

 何をしても裏目に出る日がある。ようやくアタったと思ったらオマツリでバラしてしまったり、自分が仕掛けを取り換えている時だけ魚群が回ってきたり、いつも実績のあるタナを集中的に狙っていたらベタ底で食っていたりと数え上げればきりがない。

 こんな日は基本に戻って、タナは3m〜15m、腕の力を抜いた50cm幅のシャクリ、2回上げ下ろししたらコマセの詰め換え、...と無心に、完全に機械と化してシャクリ続けることだ。そうしている間に、また運が戻ってくるものだ。

 下手な小細工は泥沼にははまり込むだけだ。我々の人生と同じだ。

ハリスもハリも号数は小さめに

 船宿の仕掛けはハリス2号の金または銀チヌ2号が標準だが、ベテランは大抵ハリス1.5号、ハリ1号とワンランク小さ目のものを使う。30cmを超す大型のハナダイでもキロ級のマダイでも、慎重にやり取りすれば1.5号で十分上げることが出来る。 私は1号まで試したことがある。これだと良型が掛かったら簡単に切れてしまった。細くしてもせいぜい1.2号どまりだ。何の魚でもハリスは細い方が食いが良い。

 ハリも同じだ。ただ、あまりハリを小さくすると伸びることがあるし、ハリ掛かりが浅くなるので外れ易いと謂う難点がある

釣り場




下浦沖

 大きく湾曲した金田湾の中央部にあるカカリ根廻りの40mダチは、秋口から冬場にかけての好釣り場だ。秋ダイの声を聞くようになると、エビ餌のシャクリマダイの船もこのポイントにどっと繰り出す。シャクリマダイの船は大抵が仕立船だ。数人乗りの小型船が多い。

 頭上一杯に竿を煽る独特の姿から、シャクリマダイの釣り舟であることがすぐ分かる。船を流しながら釣るスタイルなので、じっと同じポイントに止まったままのハナダイ船の脇を急がしげに上り下りする。
 秋口はハナダイの産卵期にあたる。だから大型が釣れるが、大抵は子を叩いた後なので、食べてはそう美味しいものではない。しかし、500g前後の良型が竿を絞るので、釣り味は堪能できる。

 500〜1kgのマダイも結構混じる。良い日に、2、3尾は釣れる。マダイの旬は早春だが、この時期のマダイも脂が乗って感激するほどうまくなる。

 ただ、マダイを釣ろうと思うとハナダイとは釣り方を変えなければならない。底狙いで、シャクリの幅も30から50cmと小幅にし、シャクリの後の待ち時間も30秒ほどに長くする。

 マダイは潮の変わり目に食いが立つ。大潮の早い潮が潮止まりに掛って緩む頃や、潮止まりから潮が動き始める頃に良く釣れる。潮の流れの緩急で、コマセを振ってから魚が食いつくまでのタイミングも違ってくる。潮が早いとコマセの煙幕が仕掛けに同期するのが早くなるので、魚がアタるタイミングも早くなる。コマセが早く流れると魚も焦るのか、上っパリに食ってくる傾向がある。

 秋口は近くにあるホウロク根にイナダが回遊してくるので、ハナダイの場所でもイナダの回遊がある。イナダ狙いだとシャクリ方はマダイと同じで良いが、タナは底から5〜10mとやや高くなる。ハナダイのようには広範囲に探る必要はない。

 イナダは水面下15から20mの浅いところで食ってくるので、アタリも引きも強烈だ。キロ級に育った良型だと、油断しているとハリス4号でも切られてしまう。

 混雑している時はガリガリ巻き上げないとオマツリばかりするので、5号と太めにすることもある。食い渋り気味の時は細ハリスが有効だ。長竿ならハリス2号でもキロ級が上がる。ただ魚を掛けてから遊ばせることになるので、船が空いていればの話である。

アシカ島廻り

 アシカ島近くの根周り35mダチも好ポイントの一つだ。数こそあまりでないが,良型が釣れる。ここは、最初の2、3流しが勝負だ。だから、手返しが肝心だ。投入を速くすることと、取り込みの時に手前マツリをしないことだ。

 ハナダイ釣りが遊漁船の定番になった初期の頃は、ここが唯一最高のポイントだった。ウイリーではなく、サクラエビで釣っていた時期だ。この小場所に、湾奥や久里浜の船が10隻以上も集結する盛況ぶりだった。その後、「ムツ六」さんや「しんべ丸」さんの営業努力もあって、他のポイントも何個所か開拓され、今日に至っている。
 2月に季節外れの南風が吹いた日があった。船は水面に浮かぶ木の葉のように翻弄されっぱなしだったが、魚の食いは好調そのものだった。結局、その日は50尾近い大漁に恵まれた。その時はじめてハナダイが底から10mも20mも上のタナでも食ってくることを実感した。

 魚が釣れて、はじめて釣りも上達する。だから、私はマダイ専門だとかヒラメ専門だとかの釣り船にはなるだけ乗らないようにしている。丸一日釣って1、2尾では練習にもならないからだ。

 それまではタイ名のつくものを2桁も釣ったら恐れ多いと言う意識だったから、この日はまさに感動の一日だった。その後もずっと余韻が続いた。たった一度の夢が忘れられずに、その後も随分と通いつめた。しかし、釣果の方はいつもツ抜けには程遠く、そのうち嫌になって止めてしまった。

 それから10年以上も経った。今では、この地区でハナダイ専門の乗合船を出している船宿は2軒だけになってしまった。船が少なくなったおかげと釣技の向上で、時期には束釣りの報も聞かれるようになった。戦線復帰した私の釣り日記から最近の釣果を集計してみた。驚くなかれ平均釣果は30尾を超えていた。

 ハナダイはカワハギと習性が似ている。夏場はバラバラに散って群れを形成しないが、晩秋から冬場にかけては中深場に落ちて一場所に群れる習性があるようだ。だから、好機はその時期と思って良い。
 水温が一年中で最も下がる2月頃は、普通の魚はパッタリ釣れなくなってしまう。ハナダイもその傾向はあるが、3月になると盛り返してくる。4、5月には二度目のピークを迎える。

 アシカ島のすぐ航路側にある暗礁が笠島だ。この沖合いの航路内に、冬場の絶好のポイントがある。水深が50〜60mとやや深いが、25cm級の良型が釣れる。ここが東京湾の冬場のハナダイの溜まり場の一つのようだ。日並みによっては中、小型のマダイも混じる。近くを大型船が頻繁に通るので、船縁に立って釣るハナダイ釣りでは船のゆれに注意が必要だ。

 イカ玉、塩辛、青イソメなどのエサを併用して好釣果を上げたりすることもある。その日の変わり種を準備していって、それが的中した時は最高の気分になるものだ。

東電沖

 久里浜沖の東電寄りにある黒根廻りの30mダチでは、春先や晩秋の一時期にハナダイの大釣りが良くある。しかし、ここで釣れるのは小型が多い。この時期には、私はハリをカワハギバリの0.8号に、幹糸は1.5号、ハリスは1.2号にして釣る。

 ここでは、クロダイとイシダイが混じる。クロダイならベタ底を狙う。シタバリにオキアミを付けるエサ釣りに歩がある日もある。コツはあまり仕掛けを動かさないことだ。

 イシダイはマダイと同じ要領で良い。ただ、シマダイクラスなら、ハナダイと同じでリズミカルにシャクッタ方が良く釣れる。イシダイはカワハギに似て、エサを咥えてもすぐには飲み込まず、違和感があるとすばやく吐き出してしまうようだ。竿先に異変を感じたら、すかさず竿を立ててがっちりとハリ掛かりさせてやる。

 冬場はムラが付きものだ。魚が一番敏感に反応するのが、水温の変化だ。2、3日季節風が吹き荒れた後は、大抵水温が下がる。こんな時は、魚がいてもまず口を使わないものだ。面白いことに、時化前や時化の最中に思わぬ大釣があったりする。

 潮廻りだと、長潮から若潮にかけて良い釣りをしている。今まで小潮廻りで潮が動かず魚の活性が落ちていたのが、潮が通り始めるこの期間に一気に活性が高まるからかもしれない。

 本格的な春の訪れとともに海水温が上昇し、「ベト」と呼ばれる不純物(植物性プランクトン)で潮が濁り始めるととたんに低調になる。「ベト」が浮遊し始めると魚探反応が一面真っ白になり、魚群の在り処が分からなくなる。

 特に、イカのように魚探のパワーを目いっぱい上げて魚群を探す釣りは完全にお手上げ状態になる。しょうがないので、一時期メバル狙いになることもある。夏場になるとハナダイは低調になり、イサキ、メジナ、イシダイなどとの五目釣りになる。

亀城根廻り(佐島沖)

 マダイやイサキ狙いの外道で、ポツポツどこでも釣れる。この辺の釣り方は拾い釣りで、東京湾のように船をじっくり停めて釣るやり方ではない。だから一概には比較できないが、50尾だ1束だと大釣りした話は全く聞かない。一場所で数尾も釣れれば上等で、型も手のひらぐらいのものが多い。

 城ケ島沖ではマダイ交じりで良型のハナダイが釣れる。しかし、五目釣りの中の一種で、専門に釣れるほど魚影は濃くないし、第一、ポイントも未開拓だ。必ず何処かに手付かずの好ポイントがある気がしてならない。船宿の営業努力に期するところが大である。

 この海域の楽しみは、様々な高級魚が釣れることだ。マダイを筆頭に、イシダイ、イナダ、ワラサ、メジナ、イサキ...何とも多様だ。春の乗っこみの時期には、30cm級の大アジが30m前後の浅場で入れ食いになることもある。このアジ、通常は100m前後の深場に生息している。

  冬場、水温が下がると際(キワ)の魚は低調になる。そんな時は、沖目の80mダチでアマダイ狙いになる。キダイやホウボウが外道で釣れる。

江の島沖

 5、6月は定置網に何百キロと入ることがあるが、特定の場所に居着くと言うことはなさそうだよね。だから、その時期でも釣りとなると難しいや」湘南・片瀬港の島吉丸の船長の話だ。

 湘南の春の海にはハナダイの大きな群れの回遊があっても、一場所に居着くと言うことはないようだ。
 江ノ島を目前にする釣り場は、水深が30mほどだ。ここは周年狙えるポイントだ。ここではセオリー通り底上3mから15mまでシャクリ上げてくる。相当食いが立っている時以外は、タナの集中狙いは止めたほうが良いようだ。

 ベタ底の魚を中層のタナまで誘い上げてきて食わせることをイメージしながら釣るといい。潮の加減でベタ底で食ったり20mも上で食ったりするから、5回に一遍ぐらいは番外地を探ってみることも必要だ。自分だけのタナで、自分だけが釣れているのも悪くないものだ。

 茅ヶ崎烏帽子岩の沖は盛期のイサキの好ポイントでもある。そして、冬場でも大型のイサキが釣れる。ここも水深は30m前後だ。良型イサキはメジナと見まごうばかりの体高のある奴で、1キロを超すものもある。この時期釣れる大型のイサキは脂が乗っている割には身が締まっているので、梅雨時の旬のイサキよりもむしろ美味い。

 ハナダイよりはタナが上で、大抵底上20m前後で食ってくる。シャクった後の待ち時間を30秒ほど長く取るのがコツだ。水面か10m前後であたることになるから、魚の激しい抵抗が直に伝わってきてものすごくスリリングだ。やり取りを上手くやらないと1・5号のハリスでは切られてしまう。かなり手慣れた人でもハリスは2号が無難だ。

 秋口には1キロ級のマダイやクロダイも混じる。シマアジが上がることもある。三崎のイケスから逃げた魚だと謂う人も居るが、これは純天然物に間違いない。三崎のイケスに入っているのはカンパチだ。春の濁り潮が入ってくると低調になる。夏場にかけてはイサキが主流になり、ワカシ、イナダと続く。

 平塚の沖にある波浪観測唐の側もハナダイの好ポイントだ。この塔は、波が生じ易い駆け上がりの縁に立っている。ハナダイの生息場所が何と無く分かるような気がする。そう言えば、三浦海岸下浦沖もいっきに600mの深みへと落ちている。

仕掛け





   


   
 

こぼれ話

蒲田の電気屋さんのこと

 蒲田の電気屋さんの側には座りたくないとつい思ってしまう。彼のは、コマセカゴの上窓全開にして、水面から頭上まで一気にシャクリ上げる釣り方だ。だから、コマセは一回タナを探ると無くなってしまう。他人の倍はコマセを使うから不公平この上もない。


 ところが、このシャクリが往々にしてぴったりと的中するから恐ろしい。そうなると不思議なことに、我々の紳士的なシャクリにはほとんど魚が掛らなくなるのだ。電器屋さんパワーで三軒両隣の魚まで吸い寄せられてしまうようで、船中には嫌な雰囲気が漂い始める。


 その内「まるで物量で勝負を仕掛けて来る米軍みたいだ」と陰口まで飛ぶ。彼のは仕掛けも大振りだ。ハリが2号、ハリスが2号と船宿の純正仕掛けだ。だから、魚が掛ると船縁に竿を当ててぐいぐいと容赦なく巻き上げる。大型のハナダイが掛ってもマダイが掛っても容赦せずに強引に巻き上げるものだから「切られた!」を連発する。アタリがない周りの客は、それを見て益々頭に血が上るのだった。


 色気を出して私も何度か真似てみたが、どうしてもこちらには釣れない。益々イライラしてくる。しかし、我々が釣れ盛っている時に、彼だけ釣れないこともある。釣りには理論的に解析できない部分が多々あるから面白いかもしれない。

 この人は他人に負けたくない性格らしい。釣果を尋ねる時は必ず相手に先に言わせてから自分の数を言う。だから、私は未だに彼に勝ったことがない。


一夜干し

 やや大き目のは一夜干しにする。一夜干しを上手に仕上げるポイントは塩加減に尽きる。たて塩くらいがいい。白身魚と赤身魚では、塩加減に随分と差がある。当初、私はアジの干物を作る感覚で塩の分量を決めていた。


 珍しいものだから、出来上がったらすぐに冷凍庫に仕舞い込んで、何かの機会には親類や知人へのお使い物にしていた。ところが、田舎のおふくろが「塩辛いけどウメッケ。野菜と一緒に鍋物で食べダッケバ」と連絡をくれた。


 すぐに冷凍庫にしまってあるものを取り出して自分でも食べてみた。おふくろの言う通りだ。塩辛くて食べられたものではない。講釈たらたら自慢話付きで送ってあったから、なんとも恥ずかしくて、暫くは落ち込んでしまった。


 この魚は、硬い頭まで奇麗に開くには技量が要る。だから、気分次第では頭を落として開きにすることもある。或いは、カマスの一夜干しように頭をそのままにして背開きにする手もある。一夜干しにした頭は、熱湯を注ぐと素晴らしいお澄ましになる。魚臭さが気になる人は三つ葉や柚を入れると良い。


 熱湯ならぬ燗をした酒を注げば、ハナダイの骨酒だ。骨酒にするなら塩はあまり振らない方がいい。


 干すのは冷蔵庫の中が無難だ。ハエもホコリもつかないからすこぶる衛生的だ。しかし、量が多いと、冷蔵庫担当の女どもが嫌な顔をする。そんな時は、竹で編んだ大ザルに乗せて夜間ベランダに出しておく。


 猫が出入りするような環境なら、釣具店で売っている専用ネットがお勧めだ。乾燥していて風のある晩なら、翌日の朝食に間に合う。


 乾きが悪いようだと、午前中は天日に当てたままにしておく。ザルの上にならべてある方はウンチバエの出入りが自由なので日中は冷蔵庫にしまい直した方が良い。取り込みの目安は、指で触ってもベタベタせず、それでいて生魚の弾力がある状態がベストだ。


 完成品はチャック付きのビニール袋に入れて、冷凍保存する。直接空気に触れたままだと、脂の乗っているものほど酸化が速く進み、味がすぐ落ちてしまう。はじめピンク色だった皮目もドドメ色になってしまう。


酒蒸し

  鰓と内臓を抜き取り、流水で開いた腹部を良く洗い流す。血合いも丁寧に除く。ふきんで水分を拭き取り、両面に軽く塩を振る。大き目の皿にハナダイを乗せ、上から日本酒かワインを注ぐ。酒の量は下側の皮目全体が浸る程度で良い。魚の上にハリ生姜を乗せると魚の臭みが無くなる。


 これを家庭用の蒸し器に入れて蒸すと出来上がりだ。蒸す時間だが、蒸気が上がり始めてから15分ぐらいも入れておけば充分だ。火からおろす時に、ちょっと醤油を垂らすと香りが良くなる。仕上げに三つ葉などの香味野菜を乗せる。


 ハナダイも30cmほどになると頭だけでも酒蒸しやカブト煮の材料になる。どちらも、酒の肴には絶品だ。目玉の裏のヌルヌルや唇付近のゼラチン質が特に美味い。

 春秋の旬のマダイならなお結構だ。カマや砂ずりも酒蒸しやカブト煮料理風にする。寒天みたいにプリプリした淡泊で上品な脂が舌の上でとろける。


名人佐藤さんのこと

 佐藤さんは私より5歳ほど年下だ。私が釣り具の通販をしていた時に、客として知り合った仲だった。彼は職場を抜け出し、事務所代わりにしていたワンルームマンションにわざわざ訪ねてきてくれた。

 私も体格は良い方だが、彼はそれ以上だった。恵比寿様のようなふっくらとしたデカ顔と布袋様のような太っ腹をしているが、そんな彼もこと釣りに関しては繊細で、まるで乙女のような気遣いを見せる。

「コマセシャクリしかやらない」と言うくらいだから、仕掛けや竿に関してもかなりうるさい。不精者の私が仕掛け作りに精を出すようになったのは、まさに佐藤さんとの出会いがあったからだった。

 最初に彼に見せてもらった仕掛けが、0.5号のハリと1.2号のハリスで出来たものだった。当時私が使っていた仕掛けは船宿の標準品で、ハリが2号でハリスが2号とかなり大ぶりだった。これだけでも、釣果の差は歴然だった。

 あのパンパンに肉が詰まった指先で、老眼鏡を掛けなければ見失いそうな0.5号のハリにどうやってウイリーを巻いていくのかと首を傾げたものだった。よく見るとウイリーも色違いの糸を交互に巻き込んである芸の細かさだ。

 からみ防止のビーズだ間を使い始めたのも佐藤さんだった。これも鼻くそほどのちっぽけな玉っころに開けられた小さな穴に1.5号だの1.2号だのハリスを通さなければならない代物だった。

 私は6本バリの仕掛けを2組作っただけでギブアップしてしまった。しかし、佐藤さんは未だにそれを使いつづけている。確かに、カラミが少ないだけに糸に撚りが出来にくく仕掛けが長持ちする。ハリスに撚りが来ると魚の食いは格段に落ちる。

 ハリの軸に蛍光塗料をコーテングした物をすぐ取りいれたのも彼だった。クッションゴムにも神経を使っていて、新製品が出ると必ず試していた。私は事務用品売り場で売っている幅広のゴムバンドを未だに使っている。100円も出すと10本は買える。

 私のところも、竿だけは通販を始めてから潤沢にあった。オモリ負荷30号のコマセシャクリ専用竿に、80号のコマセカゴをぶら下げると謂う過酷な使い方だったが、最初の試作品が1年ほどで折れた以外は5年目にはいった今でも健在だ。

 グリップがコマセで目詰まりしてカペカぺになったので、紙やすりで研磨したらその部分だけは新品同様になった。ヤスリかけの最中はコマセ臭くて閉口したものだ。5年分のコマセエキスが一気に発散された感じだった。

 リールにしても竿にしても、釣りから帰るとシャワーを浴びせるぐらいでたいした手入れもしないから金属部分にはすぐ錆が出てしまう。5年も酷使すれば充分元は取れているのだが、同じ金を出すなら船代にまわしたい方だから年中汚い道具を持ち歩くことになる。

 佐藤さんも、胴に乗る私の開発した竿が気に入ったようで、数ある愛竿の一つに入れてくれていた。彼のはオーソドックスなシャクリで、小幅でかつかなりソフトだ。潮や魚の食いに合わせてシャクリを変えることもあまりしなかった。これが結果的には彼のコンスタントな釣果を支えているようだ。

 釣況で様々にパターンを変えたくなるのが人情だ。特に不調な時はなお更だ。しかし、大抵は迷路か泥沼にはまり込むだけだ。彼が変化をつけるとすれば、シャクリの後の待ちのタイミングだ。潮が流れない時や高いタナで食う大型には待ち時間をやや大目に取っていた。

 竿も、潮の緩急と水深で使い分けていた。潮が速かったり、水深があったりすると軟調子の竿だと負けてしまうことがあるからだ。理屈は分かっているのだが、私は元々不精者だから、つい一種類で間に合わせてしまう。そんな私でも、予備の竿は必ず持つようにしている。