神奈川の海・釣り物語(イサキ釣り)

イサキを知る

旬は初夏、しかし冬場の大イサキはもっと美味い

 三浦の漁師は、濁って「イサギ」と発音する。以前は、旬の5月から8月頃が釣り期だった。近年は産卵明けの9月、10月を除いてはほぼ通念の釣り物となっている。

 旬のイサキは、釣れる場所にもよるがギロンギロンに脂が乗る。これがあのイサキかと驚くほどに美味くなる。年頃の娘の一瞬の輝きに似ている。身の色は、トロリとした乳白色で、とても奇麗だ。旬のマダイに比べても劣らぬ艶っぽさだ。

 特に、松輪沖から湾内にかけて釣れるイサキは、脂の乗りが最高だ。松輪沖の釣り場は解禁が6月1日と決められている。解禁後の松輪沖は、数十隻を優に超す釣り舟で連日大混雑する。
 船が多いので、昔の様には束釣りなどという幸運には出会えなくなった。それでも、日並みによっては30cmもある丸々と肥ったイサキが20尾30尾と釣れることがある。

 産卵直後のイサキはやせ細り、脂がすっかりと抜け落ち、不味くて食べられたものではない。このイサキが再び体力を回復し、美味くなるのが冬場だ。冬場は小網代沖や長浜沖の定置網に附いた大イサキをコマセで誘い出して釣る。

 この大イサキは網に附く海の小動物を餌にしている。冬場の大イサキはこってりと脂が乗り、その上身が締まっているから絶品だ。
 釣り場の水深は30m前後だが、タナは水面から10m前後だ。だから、掛けたら戦いだ。良型のマダイのような強烈な引きを見せる。ベテランでさえもハリス2号で切られてしまうことがある。
 小網代の「やまはち丸」から、このジャンボイサキを狙ってよく出船した。おじいちゃんとかっちゃんが魚担当の船頭だった。出船前におじいちゃんがボソボソと小さな声で状況を教えてくれる。おじいちゃんは背が低かった。その上少し腰が曲がっていた。屈み込まないと声が聞き取れなかった。孫が結婚し、曾孫が2人も出来た。それでも相変わらず現役だ。

 早めに小網代港に到着すると、定置網で取れた魚を積んだ船が帰ってくる。季節によってあがる魚が違う。アジ、イワシ、イナダ、スズキ、メトイカ、アオリイカ、ヤリイカなどが季節によって大量に捕れたりする。以前は我々でも、その場で買えた。随分安かった。魚屋や料理屋からの買い出し組みもいた。獲物は三崎の魚市場に出荷していた。定置網は航程10分ほどの近場にある。 
              
松輪沖は6月1日が解禁日
 
 松輪沖にはイサキが附く高い根が点在している。乗合船が未だ少ない時分だった。この根の周りにたくさんの職漁船が集まり、びっしりと並び壮観だった。漁師船はみなアンカーを打つ。一斉に右腕を上下させて魚を誘う。絵の様な光景だった。

 今は殆どの漁師が釣り船業に鞍替えした。イサキ10キロ釣るよりは、釣り客3人も釣る方がどれだけ楽で金になるか。今はもう詩情溢れる光景は消えてしまって、乗合船の大船団が先を争ってポイントに群がる醜い光景が展開されている。

 残った漁師も出漁回数がめっきり減った。魚は釣れないし、遊漁船の往来で落ち着いて釣りも出来ないからだ。
 釣り人を満載した大型漁船が狭いポイントを縦横に疾駆する。連休の高速道路にいる時と同じジレンマを感じてしまう。

 資源保護の為、松輪沖のイサキだけには解禁日が設けられた。解禁日の6月1日には、松輪港の船着き場の前の広場は車でびっしりと埋まる。松輪沖のイサキは最高だ。体高があり、金色に輝く魚体は見てもほれぼれする。味はもううなるほど美味い。

 ぶつくさ言うわりには、私もここのイサキにはベタ惚れなのでる。

早朝が勝負
 
 イサキ釣りは早朝が断然有利だ。松輪港からは早朝5時と7時半の乗合船が出ている。もちろん5時出船がお勧めだ。この時間の出船は、地元松輪港だけの特権だ。湾奥の乗合船が到着する8時ごろまでに、第一回のピークは大抵終了している。

 イサキ釣りも釣り座に左右される釣りの典型だ。コマセが流れていく潮先に陣取った人には逆立ちしてもかなわない。ところが、潮上には潮上の釣り方があるらしい。未だに教えてくれた人がいないので、私には未だに分からない。

 久里浜港「ムツ六」のみっちゃんの息子たちは、客がほとんど釣れない時でも連釣して見せてくれたりする。名人揃いの「ムツ六」の常連さんでもこれには敵わない様で、皆お手上げだった。

 潮が良く通る日の潮の変わり目がチャンスだ。早朝の出船時間に近い時刻に満潮や干潮のピークがある潮廻りを狙って釣行する。しかし、いやいや稼いで飯を食わなければならない身にとっては、そうそう魚の都合にばかり合わせていられないのも現実だ。

 松輪港の棒面丸には根魚釣りで随分と通った。25年以上も前の話だ。息子の千春さんに代替わりしてからTV、新聞で「棒面丸」の名が随分と売れた。新造船も次々と入れた。その頃から、私は行かなくなった。
 小網代港の「しんや丸」も老舗で、一時期随分と通った。よく釣らせもしてくれた。私も、新聞に盛んに書いたこともあった。しかし、ここもいろいろ考えさせられることがあって、いつしか足が遠のいてしまった。

 棒面丸の常連で、金田湾の民宿のおやじだった石川さんは潮焼けで船頭よりも赤黒い顔をしていた。この人は船宿船宿子飼いのサクラのはしりだった。腕も経験もダントツで、釣果も普通の客とは桁が違っていた。毎日指定席の艫に陣取り、いちいち傲慢で一般の釣り客には鼻も引っかけないようなところがあった。20年以上も前の古い話だ。

 それに比べて追浜の長野さんや山崎さんは、若い私や周囲の客の面倒をよく見てくれた。彼らは二人とも炭坑離職者だとも聞いた。ゆったりとして、貫禄のあった鎌倉の山木さん、.....皆元気でいると良いのだが。

 この棒面丸から参加して、報知新聞社主催の沖釣り大会で優勝したことがあった。28歳の時だった。商品としてもらったクーラーボックスは使用頻度が高かった為何年も持たなかったが、優勝盾はつい最近まであった。
 その日は規定の黒ムツ3尾を釣ったのは私だけだった。前年も4位に入賞していた。今思えば、壮年の釣り師たちに混じって精一杯背伸びして、一丁前釣り師のつもりでいたようだ。

 

沖の瀬のジャンボイサキ
 
 沖の瀬の80mダチにジャンボイサキのポイントがある。ここもそんなに広い場所ではない。10隻も釣り船が入るとははみ出してしまう。幸いここまで来てイサキを狙う船は少ないので、あまりその事は気にせずに釣ることが出来る。ここのイサキはともかくでかいのである。レギュラーサイズが35cm前後もある。
 ただ、外海にいるせいか魚体はスマートだ。抱卵ものでも、ペッタンコに見える。脂の乗りも少ない。だが、型が良いだけに5尾も釣ればクーラーの中は賑やかに見える。

 イサキ釣りは普通なら一個所に船を停めて釣る。しかし、沖の瀬は潮が速いので、船を流しながら釣る。イサキは根の上や潮上に附いている。だから、船がその場所を上手く通過すればバタバタと釣れる。いかに上手く魚のいる場所を通過するが、船頭の腕の見せ所になる。

 何隻もの船が入れ替わり立ち代わり同じ道筋を流してくる。魚探を覗いている船頭以外はどこで当たるか分からない。運が悪いと、コマセを詰め替えようと仕掛けを巻き上げた時に、バタバタと周りの人にきたりする。これは泣くに泣けない悲劇だ。

 船に魚が附いていれば、その後に入れても間に合う。イサキが船を追いかけてくる日などそう滅多にない。だから、大抵は慌てて入れ直しても間に合わないことが多い。

 全く釣れない。万策尽きて小便に立ったら、隣の客が大声で呼ぶ。漸く出始めた小便を途中で止めて急いで戻ると、置き竿の竿先がガタガタと揺れている。こんな事も良くある。食いが悪い時の置き竿の効用には、未だに納得できる理屈がみつからないでいる。こんな事ばかりが重なって、置き竿釣法に宗旨替えをした仲間もいるほどだ。

冬の居着きのイサキは絶品
 
 ヤリイカ釣りに熱を上げていた頃は、冬場にイサキ釣りに出掛けるなど思いもしなかった。冬場にイサキを釣らせる船宿も少数派だったこともある。探せば良い釣りをやらしてくれる船宿があるものだ。最近はすっかりこの冬場のイサキ釣りが病みつきになってしまった。

 平塚沖、茅ヶ崎烏帽子岩沖、佐島沖の亀城根、長浜、小網代沖の定置網周りと相模湾にポイントが集中している。これは水温の関係だ。冬場相模湾は黒潮本流の影響で、東京湾ほど水温が低下しない。

 お目当てはキロ級のジャンボイサキだ。体高も20cmもある見事な奴だ。一見伊豆諸島の沖合いで釣れるアオダイに見える。10mから15mの浅ダナでガツンと当たる。一瞬竿が引っ手繰られそうになる。これを確実にモノにするには2号のハリスでも不安だ。
 しかし、どうしてもイサキは細ハリスに歩がある。長竿に細ハリスというのも一つの手だ。大イサキの引きはシャープだ。何度も激しく突っ込む。顔を見るまでハラハラドキドキだ。

 自宅でこの大イサキを捌くと、腹に白い脂肪の固まりが一杯詰まっている。腹身の切り口にも白い脂肪の層がのぞいている。刺し身にすると身は透き通るようにきれいだ。コリット身が締まっていて、それでいて脂が乗っている。もう、うなるほど美味い。

 あらは残さず潮汁にする。汁の表面にはしっとりした脂が浮いてくる。白身魚の上品な旨さにコクが加わり絶妙だ。刻みねぎと生姜汁を少々入れるだけだ。味付けは天然塩が良い。
 大型は、根の上では上層に、定置網周りでは下層にいるとも言われている。どのポイントでも中型が主で、大型はそんなに上がるものではない。数が出なくても大物狙いに的を絞るか、中型に的を絞って数で勝負するかはその日の状況次第だ。


ウリ坊は釣らない釣らせない
 
 初夏に江ノ島や佐島沖で釣れるイサキは15cmにも満たない子イサキが大半だ。これらは体側に白い縦縞があるので、ウリ坊とも呼ばれている。猪の子供にあやかった呼び名だ。この子イサキはサビキ釣りで鈴なりになって釣れてくる。だから、連日束釣りの大見出しが新聞の釣況欄に踊る。

 あまり知らない人はこの数に引かれて釣りに行く。しかし、あんな小魚は50尾、100尾と釣ってもしょうがないものだ。イサキは骨太だ。子イサキはほとんど食べるところがない。「から揚げにすると旨いよ」と船宿はもっともらしく宣伝する。2、3度と揚げなければ、とても骨ごと食べることは出来ない。

 ブリの子のワカシやホンマグロの子のメジもそうだ。釣った後で空しくなる。特にこれらの魚は巨大魚に成長する。幼魚で釣上げるには本当に惜しい気がする。私はウリ坊とワカシ釣りには行かないことにしている。この釣りを看板にしている船宿にも極力行かないことにしている。私のささやかな自己主張だ。 

ウイリーのコマセシャクリ
 
 
イサキ釣りというと以前はビシ釣りかサビキ釣りだった。近年ビシ釣りの変形であるウイリーのコマセ釣りがかなり普及してきた。
 昔これに似た釣り方にカッタクリ釣りがあった。ある地区の職漁師の釣り方で、ハモ皮の擬餌を何本も附けた仕掛けを上へ上へと手繰っていくやり方だ。関東ではあまり見かけない珍しい釣り方だった。

 私はこの釣りをサビキ釣りから始めた。それから手ビシになり、次は竿ビシにした。そして、今はコマセシャクリ専門だ。この釣り方だと、多少釣り方やタナを変えるだけで、マダイ、ハナダイ、イシダイ、クロダイ、イナダ、アジと何でも釣れる。終日手を休めずにシャクリ続けるので、アグレッシブな釣り人にはピッタリだ。

 ウイリーのシャクリ釣りは、元々ハナダイ釣りの為に開発されたものだ。リズミカルにシャクリ上げてきて、魚を誘い上げながら釣るやり方だ。この釣りのポイントは、シャクリあげた後の竿の戻りと一瞬の止めにある。
 イサキ釣りの場合はこの止めをハナダイよりは長くする。

タナ取りが命

 イサキ釣りはまずその日のタナを探り当てることから始まる。ポイント毎にタナは大体決まっている。知っている場合は、そのタナの上下2ないし3mから探り始め少しづつ範囲を狭めていく。最近は船長がその都度タナを指示してくれるから楽だが、それはあくまでも目安だから、最終的には自分で自分のタナを見つけなくてはならない。

 昔は船頭は知らん振りだった。常連さんもそうだった。常連さんは今でもそんな傾向がある。下手に尋ねると露骨に嫌な顔をされたりする。

 松輪瀬の指示ダナは20m前後だ。しかし、実際は10m前後までタナが上がる。もちろん20m前後に魚がいないわけではないが、確率の問題である。魚の大きさでもタナは微妙に違う。ポツポツと釣れているからと安心しないことだ。常に隣近所の釣れ具合を視野に入れておく。自分より上手がいたら、広くタナを探り直すことだ。

 タナが決まったら、その前後2mぐらいを集中的釣れば良い。松輪瀬のイサキも大型ほど上層にいる。私の経験では、水面から7から8mぐらいで良く釣れる。釣り始めとコマセが効いてからではタナが変わってくる。

 潮の流れの緩急でもタナ取りが違ってくる。松輪沖は特別潮通しが良い場所だ。道糸が斜めに出て行く。潮止まりにはそれが真下にスルスルと降りていく。三角形の辺の計算ではないが、同じ水深でも糸の出は随分と違ってくる。

 テンビンの先の3から4mの長さの仕掛けも同じだ。潮が速ければ仕掛けは水平方向に流される。潮が止まると下方に垂れ下がる。タナ取りは厳密に考えると頭が痛くなる。最後は経験からくる勘が頼りだ。

 一般的なビシ釣りだと釣りのパターンがある。まず、船長のタナ指示よりハリス分余計に沈めてやる。ハリスが3mとする。タナ指示が15mなら、18mまで仕掛けを沈めることになる。起点は必ず水面とする。起点の基準をコマセカゴにするか仕掛けの先端にするかで、数m違ってくる。他人と情報交換する時には、これを考慮しなければならない。

 18mから1mの間隔で竿をあおってコマセを散らしながら15mまで上げてくる。コマセは一気に撒かずにパラパラと少しづつ出るようにする。これでコマセの煙幕の中に仕掛けがすっぽりと入る計算だ。このままアタリを待つ。30秒も待てば充分だ。その間にコマセの煙幕は潮先に流されてしまう。魚の活性が良ければ大抵数秒でアタリがくる。

 暫く同じタナでやってみてもアタリがなかったら、指示ダナを中心に上下に3m前後範囲を広げて探ってみる。食いが悪い時は、アタル位置がバラバラなことが多い。どうしても迷いが出るが、最もアタる確率の高いタナを重点的に攻めるようにする。
 コマセシャクリの方が、タナに一点集中する必要がないので気は楽だ。

ハリスは細い方が良い

 イサキは目の良い魚だといわれている。通常の仕掛けはハリス、幹糸ともフロロカーボン1.5号が標準だ。フロロカーボンの糸が開発されて、引っ張り強度は随分と向上した。しかし、結節強度となるとまだまだで、瞬発力に対しては充分とは言えない。大物と引っ張りっこすると、チモトや幹糸とハリスの結び目から必ず切れる。

 イサキはシャープで、結構小気味良い引きをする。中、小型のリールで微妙なドラッグ調整が出来るものは意外と少ない。良型が激しく突っ込んだら、ドラッグ機構に頼らず素早く逆転レバーをフリーにして対応する方が良い。膝を折り曲げて、体全体でかわすこともある。

 置き竿釣法では、負荷オモリ30号、全長3.6m前後のマダイのムーチング竿を使う。長竿はクッション作用があるので、より細いハリスが使える。マダイ釣りに2号の細ハリスが使えるのも、長竿のおかげだ。

ハリも小さい方が食いは良い

 
チヌバリの2号が標準だが、私は1号を使う。ハリは小さい方が確実に食いが良い。しかし、外れ易いのも事実だ。イサキの上アゴは結構硬い。ここにがっちりとハリ掛かりすれば外れることはまずない。しかし、唇の横は薄い膜状になっている。ここにハリが掛ると、巻き上げてくる途中で針穴が広がり、何かの拍子にばれてしまう。

 沖の瀬のように60m近い深ダナを釣る時は、針先の鋭利さも重要だ。一度使い古しのハリを使って痛い目にあったことがある。普通イサキは向こうアワセの魚だから、針先が鈍くなっていると、うまくハリ掛かりしないのである。水深があると余計にそうだ。

 イサキ専用のハリはふところが狭く、軸も太い。沖の瀬のイサキにはこれも使わない方が良い様だ。メッキだが、金が良いか銀が良いかは定説がない様だ。潮が澄んでいれば銀を、濁った場合は金をつかうとも言われているが確かなことは誰にも分からない。
エサは?

 ビシ釣りにはイカ玉が一般的だ。アジ釣りには食紅で染めたものを使うが、なぜかイサキ釣りには白いままで使う。アズキ粒ほどの大きさに細かく切ってある。サイコロ状に切ってあるのが多いが、大型には短冊状が良いとも言われている。短冊状に切ったものは何となくシラスを連想させる。

 擬餌としては、ハモ皮、夜光パイプ、ウイリーがよく使われる。ハモ皮にはオーロラと称して、アルミなどの薄膜を蒸着して表面が虹色に輝くように処理をされたものもある。蛍光紫の染料で染めたものもある。これは海水中で、ボーッと紫色に光って見えるらしい。

 夜光パイプは、ハリの軸が丁度入るくらいの太さのものが良い。ハリの軸長の倍くらいの長さに切断する。一端は斜めに切り落とし、反対側からハリを刺し込む。こうすると、形が子エビやシラスに見えてくる。
 ウイリーは黄色、黄緑系統が良い。針先に近いところまで巻きすぎないことだ。刺さりが悪くなる。イカ玉と併用すると安心感がある。

 大型にはオキアミ餌が効果的なこともある。下バリだけを空ッパリにして、それにオキアミを刺す。残りの上バリは全部ウイリーだ。餌取りの多い時でもこれでバッチリだ。

釣り座の差は?

 
この釣りは圧倒的に潮先が有利だ。できれば早起きして、潮先に近い釣り座を確保することだ。同じ船宿、同じポイントに何回も通っていると、今日は何処が潮先かおおよそ見当がつくものだ。

 コマセの流れていく方向がその時の潮先だ。釣りが始まったら、コマセが流れていく方向を周囲の地形と重ねあわせて記憶しておくことが大事だ。その際、風向きと潮時も条件として必要だ。

 スパンカが張ってあると、船首は必ず風が来る方を向く。だから潮の流れる方向が変わらない限り、風向きが変わればそれに連れて潮先に当たる釣り座も変わる。風向きが同じでも、潮の流れる方向が変われば潮先に相当する釣り座もそれに応じて変わる。その日の潮先を特定するのは、実際には非常に厄介なのである。

 だから、私は帰ったら釣り日記をつけることにしている。その都度竿頭の釣り座と風向きと潮の流れる方向を記入しておくのである。季節別、魚種別、釣り場別にそれらのデータが蓄積されてくると大きな財産になる。
 意識的に、人より多く魚を釣ろうとすると大変な努力が必要だ。
コマセシャクリでのタナの探り方

 この釣り方には広くタナを探れる利点がある。タナ取りが不得手な人にはうってつけだ。通常は指示ダナの上下5mぐらいの範囲を探る。

 シャクリのスパンはリール半巻き分が標準だ。中型のリールだと5、60cmに相当する。竿先を水面近くまで下げてから、軽くちょこんと竿が水平になるくらいまであおってやる。この衝撃でコマセがぱっと散る。
 そして、竿先は反動でワンテンポ遅れてじわっと持ち上がってくる。この戻りが腕の力でなく、竿の反発力でなければ誘いの効果が半減する。ここがこの釣りの一番大事な所だ。

 コマセの出具合も重要だ。シャクリ二往復で、ほぼ空っぽになるぐらいが丁度良い。潮の速さや水深によって、穴の調整が同じでもコマセの消耗が変わってくる。コマセが入っていないままでは、いくら誘ってやっても魚はまず食ってこない。

 大型狙いや食い渋り気味の時はドバドバコマセを撒いてやると効果があることもある。この釣り方だと、当然コマセの詰め換えは忙しくなる。また逆に置き竿にして、ポロポロとコマセが出る状態で待っているとよく釣れることもある。その日によってケースバイケースだから、いろいろ試してみるしかない。

 マダイが食うポイントでは底からシャクリを開始する。マダイのタナは通常底から5mぐらいまでだ。この間は小幅なシャクリにし、インターバルはやや長めにとるようにする。

 ハナダイと両狙いなら、底から3mから15mの間を探る。イサキのタナは、通常底から10m前後だ。しかし、日によっては20m近くも上がることがある。釣れなくなったら、時々で良いが水面近くまで探ってきた方が良い。これも海底の起伏に関係するから、各ポイントでほぼパタンが決まっている。

 底近くに新手が控えていることもある。たまには底からもシャクリ上げてきて、食いダナに誘い込むこともテクニックとして必要だ。

ハナグスリの効用

 釣り人の研究心と執念にはすさまじいものがある。誰もが何とか1尾でも多く釣りたいと思っているはずだ。同じハングリーな釣り人としては、この気持ちは本当に良く分かる。釣りが上達するには、このハングリーな気持ちをいつまでも持ち続けることが大事なようだ。

 釣れていなくても「私は潮風に当たればそれで良いんです」などと殊勝なことを言う人には初心者が多い。一度釣りのドツボに嵌まったら、とてもそんな格好の良いことは言えなくなるはずだ。

 ウイリー仕掛けで十分釣れるはずなのに、青イソ、イカ玉、ソーセージ、人工エサ、イカの塩辛、発砲スチロールの小片と、釣り人の好奇心は止まるところを知らない。これは各人の思い込みだから、他人がとやかく言うことはない。思い込みが自己暗示になって、意外と釣れたりする。

 ハナダイ釣りでだったが、イカの塩辛でやったことがあった。恐る恐る使ってみたのだが、これが結構釣れたので気分を良くしたことを覚えている。その時はウイリーにもバンバン食っていたから、本当は何でも良かったのかもしれない。

 根魚釣りではサバやイカの切り身をイカ油に漬けたものが流行ったことがあった。小ビンに入ったイカ油をわざわざ買ったこともあった。これは、特にメダイ釣りに効果があると言う話だった。土地によっては、イカの肝をそのままハリに引掛けて使うことももある。

コマセカゴの選び方

 松輪沖では、船を根の上の一個所に停めて釣ることが多い。だから、潮が速い日には糸が相当流される。タナが15m前後と浅くてもコマセカゴは80号の負荷オモリが附いたものを使う。

 伝統的なアンドンビシは、シャクリ上げた時の水中での抵抗がプラスチック製のコマセカゴに比べて大きい。だから、コマセシャクリに使うならプラスチック製のコマセカゴの方が良い。プラスチックのカゴは、コマセの出具合も調整できるようになっている。

 普通のビシ釣りならアンドンビシがいい。水深や潮の速さに対して自動調整機能(自然にコマセの出具合が変わる)が附いているのでプロはこちらを好む傾向がある。アンドンビシでも、ビニール辺や紙切れをコマセカゴの内側に貼り付けてやるとコマセの出具合を自分でも調整できる。

 湘南地区ではステンカンを使用している船宿もある。これも水中での抵抗が少ないので、コマセシャクリ釣りには適している。イナダのカッタクリではこれが定番だ。ステンカンがキラキラと光りながら水中を動き回ると青物の食欲を誘うらしい。

潮との関係

 イサキはアジなどと同じで潮が濁った方が食いは良い。反対にハナダイやイカ族は潮が澄んでいる時の方が良く釣れる。

 潮が動いていることも重要だ。道糸が斜めに引っ張られるぐらいに潮が速い時の方が魚は釣れる。「凪だおれ」という言葉があるくらいだ。カモメが凪の海にプカリプカリと浮いて、うたた寝をしているような平和な日には魚は釣れないものだ。

 潮の流れる向きも関係する。「今日は逆潮だからくわねーや」と船頭がぼやくことがある。上げ潮と下げ潮でも食いが変わる。潮が変わった途端にピタリと食いが止まったり、急にバタバタ釣れ出したりとよく経験することだ。どうも、水温の関係らしい。

 一年中で最も水温が下がるのが3月だ。この時期は下げ潮になると大抵魚が釣れなくなる。湾奥から冷たい潮が払い出されてくるからだ。水温の変化には、魚たちは極めて敏感だ。1℃の変化でも、魚が慣れるのに2、3日かかるといわれている。

追い食いをさせられれば一人前

 何の釣りでもそうだが、追い食いをさせられるかどうかで釣果の多寡が決まる。ところが、これがなかなか難しい。

 魚が掛ったら一刻でも早く顔を見たくなるのが人情だ。追い食いを待ってトロトロやっていたら、せっかくの魚に逃げられてしまうような気がして不安になる。魚が廻ってきたところだから追い食いさせなければと頭では分かっても、手はリールのハンドルを回しているからしょうがない。

 イサキは集団でいる魚だ。1尾掛ったら周りにはウジャウジャたくさんイサキが泳いでいるはずだ。糸を張り気味にして30秒ほど待ってみる。そうすると、食いが立っている時は必ず2、3尾と追い食いしてくれる。

 アタッタ時の感触で、魚が食いついたハリスの位置が分かる。下バリだと小さくコツンとアタッテから竿先を締め込んでいく。この時は、糸を緩めない様にして糸を少し送り込んでやるといい。いきなりゴツンときた時は、ビシの近くの上バリにきた時だ。この時はゆっくりとリール巻いて仕掛けの位置を上に持って行く。

 理屈はそうだが、現実には恐くて糸を送り込んだりはなかなか出来ないものだ。1尾掛ったら、そのまま一呼吸か二呼吸待ってみることだ。これが追い食いさせる方法の初級コースだ。

釣り場



剣崎沖

 剣崎の東の沖には、頂上が10〜20mほどの急峻な根が幾つか点在している。それらは連なって千葉県川へと伸びている。この辺は活断層が走っている地域でもある。一番千葉よりの根周りを、海図には吉野瀬と表記してある。

 三浦海岸から剣崎沖に掛けては水深が600mにも達する海底釜が横たわっている。吉野瀬を漁師たちは松輪瀬とも言う。松輪瀬はこの釜の縁に位置する。だから、常に深海からの上昇流が栄養分を運んでくるので、魚たちにとってここは豊穣の海だ。ここが東京湾では唯一のしかし三浦半島地区では最高のイサキ釣りのポイントになっている。

 地元松輪漁協は乱獲を防ぐ為に、6月1日の解禁日を設けている。釣り期は大体8月一杯までだ。早朝5時出船は、地元の船だけの特権だ。この期間松輪港は暗い内から連日大賑わいだ。
 7時半出船の湾内や湾奥の船も、このポイントめがけて押しかける。これらの船は確か入漁料が必要なはずだ。休日には50隻を超す釣り舟が集結し、付近一帯に大船団を形成する。船同志が、客の出した竿がぶつかり合うほどの間隔で並ぶ。

 早出の船が良いポイントを押さえているので、後から到着した船はポイントの端の方に船を着けるしかない。ポイントには入れるのは、早出の船が一足先に上がるのでその後からになる。しかし、イサキたちは早朝からのご馳走攻めですっかり満腹している。なかなか口を使ってくれないのが通常のパターンだ。

 私はこの混雑が大嫌いだ。だからシーズンに2、3度ぐらいしか行かない。良い時は30尾前後釣れるが、普通は一桁とまりだ。私が一桁でも、釣れている人は20尾も30尾と釣っていることがあるから難しい。竿頭と平均釣果との間に極端な開きがあるのもこの場所の特徴だ。

 これだけ船が多いと、全員に均等に釣れるというわけにはいかないようだ。ここの場合は、新聞の情報欄を見る時にはスソを参考にした方が期待を裏切られずに済む。
 それでも剣崎沖のイサキの魅力に引かれて、毎年多くの釣り人たちが集まってくる。それは一にも二にも、ここで釣れるイサキの食味に引かれてのことだ。幅広で、でっぷりと太っていて、包丁がすぐにギトギトになるほど脂が乗っている。

 ここでの釣り方はビシ釣りだ。手ビシ、竿ビシ、コマセシャクリと、各人お好みの釣り方で攻める。仕掛けの全長はやや長くして3から4.5m。ハリスは1・5号が標準だが、大型がバンバン釣れるようだと2号にする。35cm級になるとマダイかと思うほど激しく突っ込んでは抵抗する。

 食い渋り気味なら、3.6m前後の長竿の置き竿釣法に切り替える。長竿だと相当な大物が掛っても1.5号のハリスで上げられる。

 私はコマセシャクリ釣法だから2.1mの短竿も使用する。仕掛けはハリス、幹糸とも1.5号を使う。それでもイサキならどんな大型でもとれる自信がある。大型が掛った時逆転レバーをフリーにしてのやりとりは最高にスリリングだ。

 同場所で、マダイや良型のメジナが混じる。さすがに、これらには時々ハリスを切られてしまうことがある。メジナのエラブタはカッターナイフのように鋭くなっている。ハリを外す時に間違ってもここを指で押さえないことだ。私は房総の西川奈港からイサキ釣りに出て、やはりメジナを釣上げ、指の腹をザックリと切った痛い思い出がある。

 ここは根の頂上の水深18から20mが標準の指示ダナだが、コマセが効いてくると7、8mの浅ダナまで浮いてくる。

城ケ島沖

 ここもかつては第一級のイサキ釣りのポイントだった。ところがここ何年かはさっぱりで、狙う釣り船も少なくなってしまった。小イサキさえほとんど回遊してこなくなった。江ノ島辺りで盛んにやるウリ坊釣りの影響も多分にあるのではないかと思ってしまう。

 あちらこちらにゴツゴツした根が点在する。海底は凸凹だ。それでも、タナは10〜15m。海底の起伏が激しいので底まで仕掛けを下ろすとすぐ根ガカリしてしまう。底まで下ろさず直接指示ダナに仕掛けを運ぶようにする。 一番高い根は、干潮時だと水深が2、3mぐらいしかない。この場所でコマセを撒くと、タカベの群れが真っ黒になって水面近くまで上がってくるのがみえることもある。

 マダイも多いのでドラッグ調整は念入りにしておいた方が良い。私はこのポイントで、イサキ釣りの外道として2キロ超のマダイを2尾も釣上げている。マダイがいる時は必ず第一投目に兆候が現れる。誰かが「仕掛けを一発で切られてしまった」と騒ぎ出したらチャンスだ。素早く予め用意したマダイの仕掛けに取り変えて、マダイ狙いに切り替える。

 オキアミがあればそれを付け餌にする。秘中の秘だが、釣上げたばかりの元気に動き回っているシコイワシが最高の餌なのだ。私の2尾もシコイワシで釣上げたものだ。

諸磯沖

 ポイントは岸近くの30m前後の浅場からやや沖目の50から60mダチまでと幾つか点在している。ここも城ケ島沖と同様、最近はイサキの回遊が少なくなってしまった。替わりに中アジが30尾も40尾も釣れたりするから、本命が釣れなくてもクーラーボックスが空のまま帰宅するようなことはない。沖のポイントではマダイやメジナも釣れる。

 イサキのタナは底から10m前後だ。船長が魚探を見ていて指示してくれる。コマセシャクリだと底から3〜15mの間を機械的に探ってみる。そのうち一番アタルタナが分かってくるので、そうしたらその上下3mぐらいを集中的に攻めるようにする。アタリが遠くなったら、また基本に戻って広くタナを探り直してみる。

 マダイは底から7、8mも探れば充分だ。メジナはイサキとほぼ同じタナで食ってくる。メジナはウイリーによく反応する。キロ級にもなると、その引きも半端ではない。1.5号のハリスだと簡単に切られてしまう。確実に上げるならハリスは2号から2.5号が良い。

小網代沖

 港前の航程10分ほどの定置網周りの30mダチのポイント。ここではアジ、小型のマダイ、ハナダイが一緒に釣れる。ここでは越冬の大イサキが狙い目だ。11、12、1月が釣り期だ。
 釣果は水温で左右される。15〜16度がイサキの臨界温度のようだ。35cm級の幅広の見事な大イサキが船中4、5枚は必ず顔を出す。やはり朝方と夕方に食いが立つ。

 この時期は食い出しても、それが長くは続かない。せいぜい一場所で30分から1時間が良いところだ。船がポイントに入ったら手返し良く釣ることだ。オマツリして仕掛けが絡んでも解きにかかったりせず、気前良くどんどん新しいものと取り替えることだ。なにしろ、仕掛を下ろしている時間が一番大切だ。オマツリしたりして仕掛けに撚りがくると途端に食いも悪くなる。

 タナは15mが基準だが、その上下5mは探りたい。大型狙いにはハリスを3〜4.5mと長くする。コマセを散らした後の待ち時間も、30秒は取りたい。活性の良い時はコマセを振った直後にアタルこともあって様々だ。釣況に応じて臨機応変に釣り方を変えてやる。

 定置網周りで食わなくなると、1、2時間他のポイントを攻めながら釣り場を休ませておいて、再び戻って釣るといったパターンになる。

 真っ直ぐ沖目の50m立ちのポイントではハナダイがでる。ここも最初の2、3投が勝負だ。まめに船が動きまわるので、魚の釣りにしてはあわただしい釣りとなる。

佐島沖

 佐島沖の亀城根もイサキの第一級のポイントだ。またこのポイントでは、四季折々にマダイ、ハナダイ、イナダ、イサキ、カワハギ、マルイカ、アジと多彩な魚たちが釣れる。

 地元佐島の船宿は、例年3月頃からイサキの乗合船を出す。開始当初は居着きのイサキを狙う。20cm前後の中型が主体だが、1、2割は30cm級の良型が混じる。

 同場所で25cm前後の中アジが4、50尾も釣れたりする。ここは水深が5、60mだから、この時期のアジ釣りのポイントの水深100mに比べたらずっと浅い。こちらの方がうんと楽だ。

 イサキのタナは底から10m前後だ。しかし、時には20mも上がったところで食ってくる。真イワシ、ウルメイワシ、中サバが廻っているタナだ。それらを避けているとどうしても低めのタナ狙いになってしまうが、このタナで釣れるのは大型ばかりだ。

 最盛期の6月頃には15cm前後の小型が回遊してくる。連日束釣りが続く。20cmを超えるのは2、3割だ。小型でも、この時期のものは脂が乗っていて結構食べられる。しかし、私は小型が回遊する時期にはなるだけ行かない様にしている。

茅ヶ崎沖
 
 茅ヶ崎の烏帽子岩をまじかに見るポイントだ。水深は20から30m。海底の起伏が激しいので、油断をすると直ぐ根掛かりしてしまう。イサキのタナはその都度船頭から指示があるはずだから、そのタナより下を狙う時は根掛かりには充分注意が必要だ。

 盛期には小型のイサキが回遊してきて、連日入れ食いになる。サビキ仕掛けでも充分食ってくるので、初心者でも簡単に釣れる。ここではイサキのほかにマダイ、ハナダイたまにシマアジが釣れる。

 良型のアオアジが回遊してくるのに巡り合わせることもある。ポイントは近くのやや深場だが、35cm級の脂の乗った奴が、仕掛けに鈴なりになって釣れてくる。軟調の竿先が折れてしまうかと心配になるほどだ。

 冬場には居着きの大イサキが混じる。40cmもある見事な奴だ。浅ダナでくるのでアタリも引きも強烈だ。慎重なやり取りが必要だ。冬場のイサキは結構ムラがあるものだ。しかし、直ぐ沖の80mダチはアジの好ポイントだ。お土産の心配は全然しなくても良い

平塚沖

 波高計測塔が近くに建っている。ここも、イサキ、ハナダイ、マダイ、クロダイと多くの高級魚が釣れる。水深は30mほど。マダイやクロダイの良型がかかる確率が高い。
 だから、1.5号のハリスだと細すぎる。短竿の場合は特にそうだ。2号は欲しいところだ。私も何度もハリス切れで悔しい思いをしている。

 ここのイサキのタナは結構高い。底から20mぐらいまでは上がる。通常でも底から10から15mぐらいだ。ハナダイも同じタナで食ってくるが、イサキの時期にはほとんど顔を見せない。

 マダイ、クロダイ狙いだと底近くを重点的に攻める。底から1から3mぐらいで良くあたる。クロダイは下バリにオキアミを附けて、餌が底を這う様な感じで釣る。あまり仕掛けは動かさない方が良い。

沖の瀬
 
 35cmを超すジャンボイサキが安定して釣れる。4月頃から釣り始めるが本格的なシーズンは5月頃から始まる。水深は80m前後。タナは55mが基準だ。潮の速さによって+/−3m程度の微調整がいる。

 アジやサバの外道も多い。いや、むしろ外道の方が多くて、いつも入れ掛かり状態になる。だから、如何に外道をかわすかが勝負の分かれ目になる。外道が多い時は4mのハリスの長さを更に長くし、ハリ数も1本にしたりする。ウイリーも止めてイカ玉にしたり、極端な場合は空バリにしたりもする。

 コマセを振って直ぐアタルるような日は積極的に誘って釣る。魚の動きが鈍い日は置き竿にする。コマセシャクリだと、50から60mの範囲を探ることになる。ここのイサキは型がいいので、10尾も釣れば中型のクーラーボックスは満タンだ。

 余裕がある時はメダイ釣りに挑戦してみても面白い。かなりの確率で釣れる。餌は小型の冷凍したヤリイカで良い。4、5キロ級が釣れる。胴付き仕掛にし、タナは5から6m底を切れば良い。

 サメが居着くと最悪だ。巻き上げる途中でたびたび獲物を失敬されてしまう。水面でやられることもあり、本当に頭に来てしまう。

仕掛け





 



ハリス

  フロロカーボンの1.5号が標準だが、浅ダナで大型が食うと時は2号も使う。特に、短竿を使うとハリスに意外と大きな負担が掛る。やり取りは慎重にする。

  フロロカーボンと普通のナイロンの優劣だが、細いハリスになると相当に開きがある。2号以下なら断然フロロカーボンがお勧めだ。以前手持ちがなくて1.5号の普通のナイロン糸で仕掛けを作っていったらブツブツ切られて往生したことがあった。

  糸も生物なので、時間が経つと段々性質が変わってくる。あまり買い置きはしない方が良い様だ。特に直射日光は避けた方がいい。

ハリ

  イサキ専用バリよりはハリ掛かりの良いチヌバリが無難だ。私はカワハギバリを使うこともある。中型なら1号で良いが、ジャンボイサキは2号の方が外れにくい。しかし、食い渋っている時は、ハリは小さいに限る。私は大抵コマセシャクリで狙うから、ウイリーを巻いてある。それでも、外道が多い時は空バリにして、イカ玉をつける。

  特にこの時期はシコイワシの群れが入り込んでいる。これが中層で掛かったのをそのままにしておくと仕掛は団子になって使えなくなってしまう。さりとて、シコイワシが掛かるたびに巻き上げていたら、いつになっても本命のいるタナまで仕掛を送り込むことが出来なくなる。本当にイライラさせられる。

  イカ玉は必ず船宿に用意してあるが、最近は世知辛くなって別料金を取る船宿がある。自分で刺し身用のイカを捌いて持参する方がいい。2杯も捌いて冷凍庫に入れて保管しておけば、小出しにして一シーズンは使える。

  ウイリーとイカ玉を併用しても良い。イサキには濃いグリーンよりは黄色っぽい緑がいい。グリーンの夜光玉やパイプも効果がある。ハリの軸にパイプを刺して、ちょっと尻尾を長く見せるような形に仕上げるとシラスや小エビなどに見えらしい。

  沖の瀬のように水深の深いところでは、ネムリやコンニャクバリを使うこともある。掛かりが多少悪いような気がするが、掛ってからのバレは少なくなる。安いハリの中には、折れたり曲がったりするものがあるから要注意だ。

コマセカゴ

  シャクるには、水中での抵抗が少ないプラビシがいい。置き竿で釣るなら、アンドンビシでも構わない。アンドンビシは昔からあるだけに、ビシ釣りの際のコマセの出具合は絶妙だ。イサキ用のアンドンビシはアジ用に比べて網目が細かくなっているから、購入時は気をつけた方がいい。

  東京湾は潮通しのいい場所を狙うので負荷オモリは80号相当を、相模湾はさほどでもないので60号相当を使用する。

  プラビシはコマセの出具合を自由に調整できる利点がある。通常は、下は指1本分、上蓋は1/3〜2/3ほど開けておく。水中でコマセがドバット出る様ではだめで、ポロポロと出てそこそこに長持ちするように調整する。水深、潮流、シャクリ方でコマセの出具合は変わる。

  コマセを詰め替える時、かならず未だ少し残っているよな調整でなければならない。アンドンビシの場合は、中にビニール片などを入れて目をふさぐことでコマセの出具合を調整できる

リール

  小型軽量の両軸リールが良い。道糸は、新素材の3〜5号。強度的には3号で充分だ。細い方が糸フケが出難い。200mも巻いておけば充分だ。

  私は3000円前後の普及品を使っている。このタイプは比較的短期間にまずストッパーがいかれる。修理に出すと、新品の価格の7割近い修理代を請求されることもあるから閉口する。更に修理が上がるまで1ヶ月もかかることがある。その間釣りに行くなということらしい。

  そんなこともあって、私は予備に必ずもう一個持参するようにしている。私は電気製品の設計屋だ。大半の電動リールはビデオデッキやカメラよりも値段が高い。部品点数を比べたら数十分の一以下なのにである。これには今でも納得いかないでいる。常々高級釣り具に反発を感じるのは職業病かもしれない。

  電動リールをカタログに乗せている大手家電メーカーがある。昔から他人がやるものには何にでも手を出す嫌な会社だが、フィールドで実際にこの会社の電動リールを見かけたことは一度もない。不思議な日本の不思議な流通事情を現しているのかもしれない。

竿

  コマセシャクリ釣りには、オモリ負荷30号、全長2.1mの自重の軽い竿を使う。ハナダイ用のコマセシャクリ専用竿がお勧めだ。

  置き竿で釣る時は、オモリ負荷30号、全長3.6mのマダイのムーチング竿が一般的だ。この竿だと仕掛けをフロロカーボンの1.2号ぐらいに落としても、大イサキの35cm級は充分上げられる。

  竿ビシなら2.6m前後の万能竿のオモリ負荷40〜60号の替え穂を使用する。コマセシャクリで釣る時は、竿が短い分竿の持つバッファー作用が効かないので、魚とのやり取りには慎重さが要求される。

 値段は釣果とはあまり関係がないが、安いインナータイプの竿には折れ易いのがある。私の全ての竿は外ガイド式だ。糸のカラミが処理できないほどへぼでもないし、無用な流行に流されるほど初(うぶ)でもないからだ。

食べる


一夜干し

 釣ったその日の内に開いて薄塩をしておく。表面にパラパラと軽く振るだけだ。開く前に、頭を落としておいた方が後で場所を取らなくて良い。

 風のある日は外で干しても良いが、ハエのことなどを考えると、冷蔵庫の中で乾燥させた方が衛生的だ。その日の晩に入れておけば、翌朝には食べられる。

 いったん生干しにすると、暫くは冷凍保存がきく。脂が乗っているものほど酸化して味が変わり易い。冷凍保存する時は、ジッパー付きのビニール袋に入れて外気と触れないような工夫をする。


刺し身

 旬のイサキは刺し身が一番だ。特に、剣崎沖のイサキはコッテリと脂が乗っていて、旬のマダイ顔負けだ。身はしっとりとした乳色をしていて、もうトロトロだ。これは旬の時期の一瞬の輝きだ。

 本来なら釣ったらすぐに〆て置けば良いのだが、釣る方が忙しくてついつい不精をしてしまう。イサキを〆るなら、エラに指を突っ込んで掻き出し、海水を張ったバケツに放り込んでおくだけでいい。これで血が抜けて、死後硬直前のプリプリした状態が長く保たれる。
 沖の瀬の大イサキは活けジメが必須だ。脂が少ないだけに、プリプリの食感があった方が食べて旨く感じるからだ。

 アラも捨てずに潮汁にする。味噌仕立てもいい。汁の表面にびっしりと脂が浮く。イサキは鍛冶屋殺しという異名がある。骨が格別硬くて鋭い。普段硬くて鋭いものを扱いなれた鍛冶屋でさえも、誤ってイサキの硬い骨を喉に引っかけると死んでしまうほどだという喩話だ。アラの中でも、皮が特に旨い。小さな子供がいるようなら網で濾して汁だけ頂くようにする。


小イサキの握り寿司

 小イサキが釣れたら元気な奴はその場で放流するようにしている。これらは、持ち帰ってもほとんど食べるところがないものだ。

 しかし、旬の時期、佐島沖などで釣れるウリ坊より一回り大き目のものは、半身で一カン分の寿司ネタになるからどうしても持ち帰ってしまう。

 この小魚を三枚におろすのはいささか面倒だが、結構脂が乗っていて旨いので頑張るしかない。中骨も、一応は毛抜きで抜いておく。ハナダイの雀寿司ではないが、三枚におろした身を酢で〆て押し寿司風にしてもなかなかいける。


塩焼き

 旬の脂の乗ったイサキは焼くとジュクジュクと脂が垂れてくる。熱々のところに醤油をサーっと振り掛けて食べるのが定法だ。小細工も、隠し味も、何も要らない。小骨まで硬い魚だから、骨だけを飲み込まない様に気をつければ良い

 我が家でもうひとつ好評なのがイサキの味噌田楽焼き。これは割いた腹に刻みねぎ入りの味噌を入れて焼いたものである。
 味噌とねぎは味醂を入れて練り上げてある。味噌は大目に詰め込むといい。ほぐした身に味噌をつけて食べるのは勿論だが、この味噌をアツアツご飯に乗せて食べるとまたこれが美味くてしょうがないのである。

こぼれ話


イサキが山菜に化ける頃

 Yは私の親類の中でただ一人の公務員だ。地元の農学校を卒業してから、東京の本庁に数年いただけで、後はずっと東北の営林署周りを廻り続けている。東北の山々ついては勿論だが、岩魚釣りと山菜と天然水に関しては、相当な専門官だと思って密かに敬愛している。


 山形の朝日村に赴任していた頃は、大鳥池の滝太郎の話を随分と聞かされた。畳からはみ出す岩魚が山道を登る話も聞いた。八久和ダムで時々取れたという。ダムに注ぐ小渓で、何本も竿を折られた話も耳にタコができるほど聞かされた。


 私も胸躍らせながら、竿を担いで何度も朝日村を訪ねた。雪解けの時期が多かった。谷を埋めた雪のブリッジもくぐった。雪崩で崩れ落ちた、そして今にも崩壊しそうな林道も越えた。
 釣れる岩魚は30cmどまりだったが、雪代の奇麗な岩魚だった。今でも、その頃のことを思い出すと少年の日のように胸がときめく。


 熊の肉も食べさせてもらった。熊狩りは雪解けの頃の山村の年中行事だ。あまり旨いので「土産にくれ」と厚かましく貰って帰ったら、ご当地でも貴重品だったらしく、今でも「たらふく食った上に、残りのものまで全部持っていってしまった」と笑われる。


 営林署の職員は転勤が多い。山形、岩手、青森そしてまた岩手と転々としている。実家のある秋田管内にそろそろ戻れそうだと言い続けて何年にもなる。


 その彼が一時期東京の本庁勤めになり、家族で湯島にある官舎に住んでいた。私にとっては兄貴代わりだったが、20代の若い時分だったから意識は外を向いていた。あまり、訪ねていかなかった。丁度、田舎や過去からの決別を急いでいた時期でもあった。そうしなければ、都会の無機的な生活には耐えられなかった。


 私の海釣りの師匠は、Yの妹の旦那だった。Tと言い、51歳で急逝した。ガンだった。闘病中の彼とも疎遠だった。もっと何かしてあげれたのにと思うのだが、もう遅い。高度経済成長と言う格好良い掛け声に随分とたぶらかされてきた気がする。今思えば、何とも余裕のない世界に住んでいたが、当時はそれで普通だと思っていた。


 Tは海釣りは何でもやったが、特に根魚釣りが好きだった。松輪港の棒面丸から黒ムツや沖メバル釣りに良く連れていってもらった。春の沖メバル釣りは印象深かった。焼玉エンジンを乗せた昔の漁船で房総の布良沖まで行った。現当主の千春氏が若者の頃だ。弟のよういちくんは未だ子供だった。初心者の私でも、30cm級の良型がゾロゾロ上がってきた。魚影が驚くほど濃かった。


 Tは戸塚の日立製作所の側のボロアパートに私をよく呼んでご馳走してくれた。実家が小料理屋だった。そのせいか、魚の捌き方も玄人はだしだった。私も、魚の捌き方は彼から教わったところが多かった。


 Tの本業は金型の加工屋さんだった。蒲田の町工場で金型を作る仕事をしていた。その後仲間と会社を作って独立した。川崎の外れにある15坪ほどの貸し工場だった。酒が入ると必ず人生論を吹っかけてきた。私よりは10歳も年上だったが、気持ちは若かった。私の青臭い書生論にも嫌な顔もみせずに耳を傾けてくれていた。彼の良さが分かったのは、私も彼の年齢になってからだった。もっといい付き合いをしたかったが、彼はもういない。


 Yが湯島にいた頃、Tと剣崎のイサキを持って訪ねていったことがあった。Tがそれを見事に料理して食前を飾った。YもYの奥さんもこの時のイサキが余程印象に残ったようだ。


 Yは典型的な酒飲みだから、酒の肴は「粗塩で充分」な方だった。そのYが山へ戻ってからも再三「あの時のイサキは旨かった」と謎を掛けてきた。


 イサキの旬と山菜の時期は丁度重なる。Yは役所関係者や自分の兄弟姉妹と同じように、私のところにも毎年山菜を送ってくれる。自分自身で歩き回って採ったものだ。まず、シドケ、ウド、タラの芽が届く。年によっては天然ワサビや親指ほどの太さのワラビが入っていたりする。天然ワサビの根はせいぜい小指ほどだ。これを目の細かいおろし金(陶器製のものがいい)でおろし、アツアツご飯にかけ、醤油を1、2滴垂らす。口に含むと五味がフワット広がる。野生的にして、繊細な味だ。


 天然ワサビは葉や茎をむしろ食べるようにできている。さっと熱湯をかける。細かく刻み、更に包丁の背で執拗に叩く。五味が辺りに漂う。加減が難しい。湯通しが過ぎると辛味が無くなってしまう。


 更に季節が進むと竹の子が届く。高山に生える根曲がり竹に出る竹の子だ。太いものは私のあれぐらいもある。皮付きのままこれを焼く。それをふうふう言いながら皮を剥き、味噌をつけて食べる。出羽三山の修験者になった気分になる。


 山菜が届くと剣崎沖のイサキの出番だ。ところが、ここのところ思ったように釣れないので、しかたなく房総で釣ったらイサキを送ってやったことがあった。早速「今年のイサキはダイエットのし過ぎじゃないの」とお叱りの電話があった。次に、佐島沖のイサキを送ってやった。どれも22、3cmの食べ頃サイズだった。これも「東京で食べたのとは少し違う」とのたまう。


 剣崎沖は相変わらずムラッ気が多くて、出かけて行っても釣れそうになかった。万策尽きて、沖の瀬で釣った35cm級のジャンボイサキを送ってやった。ここのイサキは脂が少なくて、あまり旨くはない。しかし、デカイので感動する。「署の皆が驚いていたよ」とまずまずの電話が入った。


 古代東北の覇者阿倍一族の拠点だった水沢営林署の官舎からだった。皆で一杯やっている雰囲気だった。その年は、何とかこれで勘弁してもらった。