神奈川の海・釣り物語(タチウオ釣り)

タチウオを知る




ムツ釣りでは嫌われモノ

  久里浜沖で根魚釣りが盛んだった頃の話だ。黒ムツ釣りをしていると、このタチウオが時々掛かった。大抵巻き上げてくる途中で掛かる。
 向こうアワセ魚だからがっちりとハリ掛かりする。ハリが深く入り込む為、途中でハリスが歯と擦れて切れてしまうことが多かった。よい群れ(?)に当たると、胴付き仕掛けのハリがほとんど無くなっていることがあった。

 ハリスだけならまだ軽症だった。道糸が途中でぶっつりと切られてしまい、悔しい思いをしたことが一度ならずもあった。糸切り魔はフグが犯人の時もあった。どうも、奴さんたちは道糸の色が気になるらしい。
 関東では、それほど馴染みのある魚でもなかった。だから、たまに釣上げてもちっとも有難いと思わなかった。根魚ファンにはどうしようもない厄介モノだった。
 
別名はユウレイ

 「この魚だけは明日が分からないよー」と船頭が嘆く。前日盛んに釣れたのに翌日は魚探に全く映らなくなってしまうことがあるらしい。ユウレイ見たいに目の前で魚探からサーっと消えてしまうこともあるらしい。

 タチウオは強い風が吹いた後にもぱったりと姿を消すことがある。時化後2、3日は出船を見合わせるのが賢明だ。

 潮の変化にも敏感な魚だ。冬場がベストシーズンだが、内湾の冷たい潮が流れてくると、ぱったりとアタリが止まってしまうことがある。潮が動いていないと、また食いが悪くなる。
 1日の中でも、食う時と食わない時の落差が激しい魚だ。それまで順調に釣れていたのに段々アタリの回数が減り、食いが浅くなり、餌だけ取られるようになり、ついには餌さえ取られなくなる。自然現象とは言え何とも不思議だ。



潮先が断然有利
  
  大抵の釣りがそうだが、このタチウオ釣りも潮先に釣り座を占めた人が断然有利だ。私見だが潮上に廻ってくる魚は、どうもすれっからしが多いようだ。ハリがあちこちにぶら下がっていると、当然魚だって警戒する。

 タチウオ釣りに関して、釣り欄の釣果はスソの数字を頭に入れて出かける方が無難だ。船中の平均釣果は、大抵スソの数値とほとんど変わらないものだ。そして、潮先に陣取った釣り人の1人や2人がダントツに釣るのがいつものパターンだ。

惑わず真タナを攻めること
  
 広いタナで釣れるのもタチウオ釣りの特徴だ。上下する餌を追ってかなり上層まで浮いてくることもあるようだ。アクションを付けて巻き上げてきたら水面下30mぐらいのところで掛かったこともあった。これで結構タナボケしてしまうのである。

 タチウオの真タナは底から7〜8m前後と言われている。だから、仕掛けの長さを計算に入れながら、この辺りを探っていればまず間違いないはずである。

 オモリが底に付いた状態を0mとする。仕掛けの全長が3mなら、3m巻き上げれば下バリがそこスレスレの位置に来るはずである。潮が流れていれば多少斜めになるから、数10cmは底を切った状態にあるかの知れない。
 だから、タナが8mなら11mぐらい巻き上げることになる。人によってはタナの表現が違う。オモリの位置で言う人も居れば、餌の位置で表現する人もいる。だから、最終的には自分で見つけるしかないのである。

 自分に釣れる確率が低い場合はタナが少しずれている可能性がある。人の言葉に惑わされずに、自分自身の真タナを逸早くつかむことがタチウオ攻略の鍵だ。

誘いは効果的か?

  竿先を水面スレスレ迄下げたら、軽く聞くような感じで目の高さまで、再び竿先を持ち上げてやる。その位置で止めてアタリを待つ。

 食い気のある無しにもよるが、竿先に出るアタリは概して微妙だ。竿先を押え込むような異変を感じたら、チョンと竿先をあおって合せてやる。この時に腕の力で目一杯合わせてしまうとすっぽ抜けが多くなる。

 1分前後待ってもアタリが無いなら、リールを巻き上げながら竿先を水面近くまで戻してやる。仕掛けの位置はリールで巻き上げた分だけ変わることになる。タナの上限と下限の間でこれを繰り返すのである。この時の聞き上げる動作が誘いにもなる。

 真タナを探り当てたら別の誘い方もある。同じタナで時々竿先をチョンと跳ね上げて誘うやり方だ。この誘いが意外に効果的なこともある。

餌はサバよりもサンマ

   魚が釣れている日は職漁船の数で分かる。小回りの利く職漁船が乗合船の間をちょこまかと動き回る。彼らは長い延べ縄を引きずりながらの漁だ。たまにだが、漁師の仕掛けとオマツリすることがある。
 漁師の餌はイワシの一匹付けだ。ハリも独特のタチウオバリで、我々の物とはかなり違う。軸に対してチモトを90度曲げてあって、その近くに餌止めが同じ方向に突き出ている特殊な形状をしている。オマツリするとなかなか外れにくい厄介な代物でもある。

 遊漁船ではサバの切り身を短冊状にきった物を餌として使う。これと夜光のタコベイトを併用して釣るのが一般的だ。

 走水で新規開店して間もない船宿から出船した時には、サンマの身餌を渡されたことがあった。この船宿の船長の話だと、サバよりはサンマの方が格段に食いがいいらしい。ただ値段が高いので、船宿側としては使い切れないのが実状のようだ。
 その日はタイ釣りの余興に狙っただけだったから、釣っていた時間も1時間ほどしかなかった。それでも10尾ほど釣れたから大漁だ。他の船はあまり釣れていなかったから、実際に効果もありそうだった。

歯には御用心

   スーパーで売っているタチウオは、ぶつ切りの切り身にされ、奇麗なパック詰めになって並んでいる。それだけ見ると、銀白色の外観や乳白色の身の色から、円らな瞳をした可愛いおちょぼ口の魚を連想しがちだ。
 しかし、実物はそれとは似ても似つかぬ獰猛な顔をしている。姿のまま店頭に並ばないのは、1m近い長さのせいだけではなさそうだ。

 はずみでこの鋭い歯に触ってしまうことがある。軽く触れただけでも血が吹き出してくる。まともに指を突っ込んだりしたら、もげてしまうに違いない。ハリを外す時は、がっちりと喉元を押さえてからにする。外してからも、誤って膝の上などに落としたら大変だ。ゴムの合羽などは簡単に食い破ってしまう。
 大事な所まで噛み切られないように、御用心御用心。

夜にはオカッパリで

   横須賀の海釣り公園付近は、タチウオの夜釣りの穴場だ。晩秋から冬場にかけてが狙い時だ。青果市場の裏のアタリから釣り公園にかけての広い地域で釣れる。狙う人が少ないので比較的自由に竿が出せるのもいい。

 晩秋には小アジが未だ釣れる。夕方小アジを釣っておいて、それの活きた奴を餌にする。寒くなって小アジが釣れなくなると、近くのスーパーでシコイワシを買って、それを餌にする。
 たまにだが、でかいアオリイカがかかることがある。しかし、足元まで引き寄せても大抵はばらしてしまう。イカ釣りに慣れなていないのと、水面までの距離が結構あるので長いタモがないと掬えないからだ。

ワームフック

 
 三崎港にある漁具屋には、漁師用の釣り針がいろいろ置いてある。それらは大抵数百本単位で、デカ袋に入って売られている。たくさん使う人にはお徳用だ。
 私もタチウオ用にと銀まるのでかいハリをまとめ買いしてあった。タチウオ釣りはハリの消耗が激しいからだ。これはハリ先が箸の先ほどもある無骨な代物だ。以前は、船宿の仕掛けと言うとこれだった。ところが、最近は細身の専用バリが開発されて、銀まるは使わなくなってしまった。

 新開発の細身のハリは如何にも釣れそうな外観をしている。これを見ていると、今まで簡単に餌を取られたのも一つにはハリが問題ではなかったのかと思ってしまう。
 そこで思い着いたのがワームフックだった。ワームフックは新開発のタチウオバリよりも皿に針先が鋭く出来ている。軸の長さも遜色が無かった。

 誘いが大事だ。そこでタコベイトの頭にバルサ材から切り出したナツメ型の浮きを挿入してみた。これをバケツの中でで動かしてみたら、コダコやコイカが泳いでいるようにも見えてなかなかのものだった。
 さてこれを持って雪辱戦に出掛けようと思ったら魚がどこかへ消えてしまっていた。やっぱりユウレイだった。




タナとりの秘訣

   まずオモリが底に着いたら糸ふけを取り、3mくらい底を切ったところから探りを開始する。仕掛けの全長は3m前後だ。だから、餌は底近くから上がってくる計算だ。日中、真タナは底上10mぐらいまでだと言われている。だから仕掛けの長さを計算に入れて、15mぐらいまで探ってみる。
 今まで一番確率の高かったタナは底から7〜8mだった。これは餌の位置で言えば、底から5m前後だ。

 竿先を水面近くまで下げる。その位置から目の高さよりやや上ぐらいまでゆっくりと聞き上げてやる。この時にフワッと竿先が押え込まれるようなアタリが出る。
 アワセのタイミングがまた難しい。びっくりアワセではまず釣れない。敵に違和感を与えないようにする必要がある。じっくり食い込ませる方がいい。2、3秒経ってもまだ竿先が押え込まれているようなら本物だ。軽く竿を立ててやるとがっちりとハリ掛かりする。

 しかし、いきなりゴツゴツと来るようなアタリだと、まずハリ掛かりさせるのは難しい。シロギスのブルブルとよく似ている。食いが浅い時はコツンだけで餌が食いちぎられている。

 真タナが決まったら、次からはその近くを集中的に狙う。かなり上層でも食ってくることがあるが、それはまぐれだと思って無視することだ。あくまでもそこから7〜8mが狙いどころだ。

アワセのタイミング

  アタリは魚の活性状態でまるっきり違ってくる。食いが立っている時は向こうから勝手に掛かってくれる。イヤーな感じなのが、コツンときて餌だけ失敬されるケースだ。魚がそこに居るのに、ハリに掛かってくれない時だ。

 こんな時は置き竿にして、気分転換でもした方がいい。竿を放り出して小便をしていたら、隣の客に「釣れてるよ」呼び戻されたことが何度もあった。釣りも真面目にやるだけが能じゃないのだ。

 ハリ掛かりすると豪快な引きを堪能させてくれる。メーターサイズともなると竿が引っ手繰られそうになる。途中でフワットと軽くなる小技を繰り出したりもする。一瞬ばらしたかと青くなる。しかし、程なく強烈な反撃が始まる。繊細なアタリと豪快な引き。これがタチウオ釣りの醍醐味だ。

ルアーでも釣れる
 
 以前は鉛の擬餌を使ったカッタクリ釣りも盛んに行われていた。しかし、餌釣りに方が歩がいいので、こちらの釣り方が定着しつつあるようだ。

 もう10年も前の話で、海のルアー釣りなどは未だ始まっていない頃だった。仲間がメタルジグやミノーを持ち込んで結構釣上げたことがあった。釣り方に関してはまだまだ開拓の余地が有りそうだ。
 オモリが80号だから、テンビンから糸を出し、その先にルアーを結び付けることになる。私はこの方式で陸からアオリイカの良型を釣ったことがあった。

水中ライトは必需品か?

   水中ライトはそれなりに効果があるようだ。単3電池が1本入る小型の水中ライトだ。投入前にしっかりと蓋を捻じって閉めておく。内部に海水が入り込むと電池がすぐに駄目になってしまう。

 オカッパリでは電気浮きかケミライトが必需品だ。ケミライトは夜アナゴ釣りでも重宝する。船釣りで一度ケミライトを試してみたいと思っていたら、どうも市販された物があるようだ。私が考えたのは、水中ライトの中身を全部取り出し、そこにケミライトを何本か詰め込む方法だった。
 あの鋭い歯も、水中ライトのケースまでは噛み砕けないだろうと言う算段だった。

タコベイトは必要か?

 タコベイトの使用も一般的になってきた。通常ハリは2本だから、ピンクとグリーンを1個づつ付ける。チモトには長さが数cmもある太めの夜光パイプを被せてある。初期の頃はこれだけでも充分釣れた。だから、敢えてタコベイトを付ける必要が無いようにも思うのだが。

 しかし、他人がその様な仕掛けで余計に釣ったりすると、ついつい真似してみたくなるものだ。イワシの頭も信心からである。釣りには思い込みも必要だ。
 タコベイトに擬餌的な役割を持たせるならアクションも大事だ。頭の部分にフローテングするような軽い芯を入れると、タコベイトの動きが見違えるほど生き生きとしてくる。

ハリスは細い方がいい

 市販の仕掛けはナイロン10号が一般的だ。歯が鋭いから、ハリスは太い方が安心なことは安心だ。タチウオの歯の切れ味は半端でないことも確かだ。鋏でさえなかなか切れない新素材の道糸をいとも簡単に切ってしまうほどだ。歯が触れれば切れてしまう。ハリスが10号だろうが3号だろうが、あまり差はないはずだ。そう考えるようになって、私はハリスを6号にした。タチウオぐらいのパワーなら4号でも充分かもしれない。

 小さ目のワームフックと4号の細ハリスで狙えば竿頭間違い無しと胸算用をして準備をしたら、下浦沖から魚が忽然と消えてしまっていた。未だ試す機会がないまま仕掛けは眠っている。





 

釣り場



走水沖

   堀海岸の団地の直ぐ前にあり、水深が60m前後と浅い。ムラが多いので、安浦辺りの船が行きかえりに狙うぐらいだ。
 ここでは時期になると赤ムツが釣れる。走水のアジ船がアジ釣りのついでに釣らせてくれることがある。

金沢八景沖

   夏場はこの辺りまで入り込むらしい。秋から冬にかけてがタチウオ狙いで乗合船が出る時期なので、私は未だ行ったことがない。

観音崎沖(1)
    
 観音崎灯台から千葉県金谷側に引いた線が航路と交わるアタリがいいポイントになっている。しかし、浦賀航路内にある為、あまりおおっぴらには操業が出来ないようになっている。長居すると巡視船が警告にやってくる。
 水深は60〜70m。ここで釣れる魚は小型が多い。

観音崎沖(2)

 観音崎灯台と千葉県の富津とを結ぶラインが航路と交わる辺りにある。ここは少しだけ航路から外れているのでお目こぼしをしてもらっている感が無きにしもあらずだ。大型タンカーが通る時などは、やはり巡視船が寄ってくる。

 ここは水深が80〜100mで、最盛期である晩秋から冬場にかけての本命のポイントである。
 潮通しが良いので、一流しの間に船は結構移動する。釣っていても、10mぐらいはタチが変化するから、タナ取りはまめに行う方がいい。

 一部が大アジ釣りのポイントと重なる。たまにだが、丸々太った大アジがタチウオの仕掛けに食ってくることがある。何キロもあるジャンボトラフグが上がって話題になったこともあった。

下浦沖

 金田湾の沖は一気に600m近くも落込む急傾斜地になっている。この急斜面の水深85mラインが初期のポイントになる。例年9月頃から釣れ始めるが、この頃はまだ小型でガリガリにやせているのが多い。

 直ぐ近くにハナダイやイナダの好ポイントがある。そこは水深が30m前後しかない。如何にこの辺りが急斜面かが分かると言うものだ。

仕掛け




ハリス

  1000m巻きの安物ナイロン糸でも充分だ。8〜10号なら強度的には全く問題はない。フロロカーボンなら6号で充分だ。チモトだけワイヤーにしておけば、4号でもいける。ワイヤー部分は夜光パイプで一応隠しておいた方いい。

リール

  電動リールを使用する釣り人が随分と増えてしまった。私は相変わらず手巻きリールだ。ところが自分だけに釣れないことがあると、手巻きリールを使っている自分が余計に惨めったらしく思えてきて益々釣れなくなったりする。

  軽いと安いと言う理由で、私はカワハギ用のリールを使っている。巻き取りの速さでは周りの人に負けるので、移動の時は一番最後までリールに触っていることになってしまう。周囲の視線が痛いときもあるが、それも気せず使い続けている。

 標準は中型の両軸リール。3〜5号の新素材の道糸を200mほど巻いておく。300m巻いておけばスルメやヤリイカにも使える。

竿

  あまり軟らかいと引っ掛かりが悪いみたい」と久里浜港は平作丸のヒロシ君は言う。「食い込みなら軟らかい竿にはかなわない」と私は意地をはる。ヒロシ君は2代目だ。地元の水産高校を出て、先輩たちの手伝いから始めて今は押しも押されぬタチウオ船の船長だ。

 タチウオ専門にやってきたから、若いけれどもタチウオを釣らせることにかけてはピカイチだ。他の船頭の倍は釣らせる。船頭稼業は運動不足になりがちだ。若いのに腹の出っ張りが目立つようになってきた。

 職漁師は手釣りだ。見ていると腕をいっぱいに持ち上げて、かなり力強いアワセをしている。確かにタチウオの上顎はかなり固い。そのせいか、巻き上げの途中で食いついてきた魚はバレ易い。向こうアワセで掛かりが浅いからのようだ。私の結論だ。シャープなワームフックを用い、やや軟らかい竿で釣る。

 私はオモリ負荷30号、全長2mのハナダイのコマセシャクリ竿を使うことが多い。軽くて疲れないことがこれを使っている第一の理由だ。

 せこい食い方をする時は、2.7mの万能竿を使う。替え穂付きだから、オモリ負荷60号前後の軟らかい方を選ぶ。これの方が餌を咥えた時に魚に違和感を与えないし、長い分アワセもがっちりと利かせられる。
 しかし、こんな長竿を丸一日振り回したら翌日腕が上がらなくなってしまう。だから、この竿で釣る時は時々置き竿にして中休みを取るようにしている。

テンビン

   腕長が短いとハリスとの絡みが多くなる。極力長めの物を選ぶ方がいい。腕長50cmは最低欲しいところだ。

食べる



バター炒め

  テフロンコーテングをしてあるフライパンにバター(マーガリンでもサラダ油でもいい)を引き、ブツ切りにした切り身を乗せる。包丁の腹でつぶしたニンニクと唐辛子の粉を上から振り掛け、両面をキツネ色に焼き上げる。これも韓国式だ。
   醤油もいけるが、塩コショウで食べても旨い。

干物/みりん干し

  頭を落とし、内臓を掻き出し、背開きか腹開きにする。他人に上げるなら長いままの方がインパクトがあるが、普通は15〜20cmほどの食べ易い大きさに切ったものを開く。開いたものを塩水に漬けてから乾かしてもいいし、塩を振りかけてそのまま干すようにしてもいい。あくまでも甘塩にするのがコツだから、塩加減は慎重にすることだ。

 みりん干しの場合は、醤油とミリンの比率が2:1ぐらいのタレに一晩漬け込み、それを丸一日程度冷蔵庫の中で乾かす。保存は、一度に食べる分量をビニールパック等に詰めて小分けにし、それを冷凍にしておく。

 密封して、外気と直接触れないようにしておくと長持ちする。脂が多い魚は、日が経つとどうしても脂焼けして、臭くなるし、味も落ちるので早めに食べるようにする。

蒲焼き

  3枚におろした身をアルミホイールの上に並べて白焼きにする。火からおろす時に、蒲焼きのタレを絡める。タレは醤油、みりん、砂糖、水飴などを入れて煮詰めたもので、前もって準備をしておく。うなぎの蒲焼き用のタレでもいい。
 食べる時に、サンショの粉や七味唐辛子をかける。うなぎと比べても、少しも遜色が無い。

韓国風煮魚
  
 キムチに使う余り辛くない唐辛子粉を使うのがミソだ。韓国料理は赤くないと失格だ。しかし、我々日本人の舌にはそれはあまりにも過酷すぎるので、そこのところは上手に加減する。
 ぶつ切りした切り身を醤油とミリンで、落とし蓋をしながらじっくりと煮込む。タレがトロッとするぐらい煮詰まった方が旨い。火からおろす直前に、唐辛子粉とつぶしたニンニクを加える。
 旬のタチウオは絞れるほど脂が乗っている。和風の煮魚だと、この脂がしつこく感じられる。香辛料を利かせて韓国風にすると、このしつこさが消える。
 甘目が好きなら砂糖を少々入れてもいい。砂糖は醤油の前に入れるのが、料理の基本だ。

刺し身/タタキ

   タチウオはサバ亜目に分類される魚類である。そのせいか、結構傷みが早いところがある。魚屋の店頭に並んだもので、刺し身用と言うのは未だかってお目にかかったことが無い。タチウオの刺し身を食べられるのは、釣り人の特権かもしれない。

 頭をバサッと落し、3枚おろしにする。内臓がほとんど無い魚だから調理は楽だ。皮が薄いから、削ぎ造りにする。皮目がまな板側に来るように乗せ、左側から順に身を削ぐように包丁を入れていく。
 包丁を入れる時は、皮まで切れないように加減する。刃先が皮目に到達したら、皮目に沿って包丁を左横に引く。そうすると、皮の付かない刺し身を取ることが出来る。身は乳白色のきれいな色をしている。

 メーターサイズにもなると身も厚くなる。立派な刺し身が取れる。小型は身が薄いから、タタキにするといい。細造りにすると見てくれもいいし、食べ易い。旬の頃は脂が乗っていて、まるでネギトロを食べているようだ。

 タタキにしろ刺し身にしろ、普通はワサビ醤油で食べるが、韓国式にチョコチュジャン(唐辛子味噌を酢で溶いたタレ)で食べても旨い。
 韓国人はこのタチウオが大好物だ。、刺し身はなかなか家庭では食べられないが煮魚は結構良く食べる。私の家に遊びにきた韓国人に、釣ってきたばかりのタチウオの刺し身をご馳走したら大喜びしてくれた。

こぼれ話



自分の写真が掲載されて

   会社の釣りの例会で仕立てた船に、たまたま石井善魚さんが同乗した。石井さんは報知新聞社の報道写真部長まで勤めた人だが、釣りの写真でも本邦第一人者だった。
 週刊釣りニュースのAPCの会合などで顔は知っていたが、未だ若かった私などはとても親しく話が出来るような身分ではなかった。ムツ六のおばあちゃんの「乗っけてやってよ」の一言で決まった話だった。

 釣り場は観音崎沖。釣り物はタチウオだった。会社の例会でタチウオを取り上げたのは、今回が始めてだった。それほどに、この年は異常なほどの馬鹿食いが続いていた。
 参加者の大半はタチウオ釣りが初めてだった。それでも、釣れないことが代名詞になっていた例会で、この日は珍しく釣れに釣れた。

  潮先の釣り座を引き当てたUさんなどは「休む間も無いよ!」と嬉しい悲鳴を上げっぱなしだった。「あんたの親類だもんなー」。口の悪い仲間たちからやっかみの言葉が投げつけられた。Uさん、歯が出っ歯ているところなどはタチウオに似ていなくもなかった。

  メーターオーバーの大物がボンボン上がる。幅広で肉厚の奴だ。船上に転がされ、バタンバタンと船底を叩く音も半端ではなかった。「石井先生が魚を呼んでくれた」と皆興奮気味だ。
 荒食いが終日続いた。皆、側でシャッターを切られても気がつかないほどの熱狂ぶりだ。石井さんもいい写真がたくさん撮れたようだった。
 「もういっぱいだよ」と石井さん。早々に竿をたたんでしまった。後半漸く快調に釣れだした私の側に来て、カメラを構えて待っている。いいところを何枚か撮ってもらった。
 結局、私は写真を撮りながら釣った石井さんの半分も釣れなかった。石井さんは釣りの腕もなかなかなのである。

  帰り際に、来年のカレンダーをお土産に持たしてくれた。石井さん自らが撮った写真で構成された釣魚カレンダーだった。新年までは未だ2ヶ月近くもあった。

  その週は、報知新聞と週刊釣りニュースにメーターサイズのタチウオをぶら下げた私の写真が同時に掲載された。専門家はやはり違う。クネクネと躍動するタチウオの姿と、本当に嬉しそうな私のえびす顔が生き生きと撮れていた。
  報知新聞の写真は小さい上に魚で顔が半分隠れてしまっていた。これなら本人しか分からないと思っていたら、2、3の知人から「見た」と電話が掛かってきた。手配写真などもこんなものかもしれないと変に納得してしまった。

  それから暫くして、マンションの上の階に住むKさんが、文庫本に私の写真が載っていたと教えてくれた。早速近所の本屋さんに行ってみた。そうしたら、石井さん編集の本にタチウオを釣上げた瞬間の私の雄姿がバッチリと載っているではないか。「石井さん、それはないぜ。一冊ぐらい贈ってくれてもいいのに」とぶつくさ言いながら、本を買って帰ったことがあった。

  人の写真は随分と釣り新聞に載せてやったことがあった。ところが、自分の写真が出たのはこれが初めての経験だった。自分の記事や写真が載ることがこんなに心ときめくことだとは知らなかった。

久里浜港平作丸

 タチウオは別名ユウレイとも言われている。ムラが多い。だから船宿の看板にするにはやや難点があった。それを、久里浜港の平作丸が見事にやってのけたのである。初めの数年間は、見ていて気の毒なほど客が少なかった。大型の新造船にいつも2.3人しか客が乗っていなかった。

 その中、船頭も釣り人も釣りの要領が分かってきて、20尾、30尾とコンスタントに釣れるようになった。初期の頃は、2桁も釣れば大漁だったから、ものすごい進歩だ。繊細なアタリと強烈な引き、そして食べて意外に旨いのでファンも増えていった。

 段々、タチウオと言うと平作丸と言う返事が返ってくるほど名前が定着した。辛抱した甲斐があった訳である。釣れ出すと一軒では捌ききれないほど客が増えてきた。それを見て、タチウオの看板を出す船宿もどんどん増えた。いまやタチウオ釣りは、釣り物が少なくなる冬場の東京湾の遊漁船のドル箱的存在だ。

 最盛期ともなると、東京、川崎、安浦、大津港などの湾奥の船に加えて、富津、金谷などの千葉側の船も乗り込んでくる。これに職漁船が加わるから、冬場の観音崎沖は大混雑だ。目の前には、船上に抜き上げられる魚がギラギラと太陽を受けて輝き、まるで剣舞を見ているような光景が展開する。
平作丸は乗合船としては後発だが、タチウオ釣りに関しては開拓者だし、何処の船宿にも負けない腕を持っている。と、私は肩入れしたくなるのである。