9月12日(日)十一代目市川海老蔵襲名披露 口上、助六由縁江戸桜 御園座すみませーーん、ごめんなさい!!もういきなり謝っちゃいます。
別にどうってことないと思って、友人たちと遠足気分で観に行ったらすごくよかったというパターン。
物見遊山だけでは終わらずに、後々感動が尾を引く名古屋版・市川海老蔵襲名披露でした。
「海老蔵さんのファンというわけではないからお安い席でいいわ」ということで落語の仲間同士であえて三等席のチケットを取りました。だって御園座って一等席が2万もしてお高いんですもの。
しかし助六に扮した海老蔵さんが花道から登場して何度も見得を切る姿をオペラグラス越しに見たときに「無理してでも一等席に座るべきだった」と地団駄を踏みました。
照明がとても明るいので2階からは特等席や一等席のお客様がうっとりしている顔がよく見えました。「私もあそこに座るべきであった・・・」
「せっかくだから良い席で観たい」という知人・友人たちには特等席(22000円)をジャンジャン取ってあげた私です。
私といえば日ごろの観劇貧乏がたたってこのザマだ。うう・・・・(;_:)
ちなみに三等席は6500円也。(私にとってはこれも決してお安くない!)
でもまぁ、2階の一番後ろから観てもすごくよかったんだよ!!と感動を素直に喜ぶことにします。
本当によかったです。手放しで喜んでます。見ておいて良かったーーー。そして十一代目海老蔵さんと同じ時代を生きていてよかった!
今回はイヤホンガイドを借りました。おかげで細かいところまでよくわかって歌舞伎が十分楽しめました。イヤホンガイドとは歌舞伎を見ながら解説が聞けるという初心者には誠にありがたいシロモノです。ストーリーの解説だけではなくて、衣装や音楽の説明も入るのでとても勉強になります。
役者さんがセリフを言う時以外に絶妙のタイミングで入るので決して観劇の邪魔になることはありません。
「助六」という作品はそのストーリーに大した意味はないのですが、登場する助六が吉原で見せる数多くの粋な色男振りを楽しむのが見所なのだそうです。というか、歌舞伎自体がストーリーよりも役者の見せ場を重要とするものらしいのです。(と、通の友人が言っていた・・・)
場所は吉原、最初の見せ場としては豪華な花魁道中。吉原で一番売れっ子の太夫・揚巻(あげまき)の登場シーンです。大勢の若い衆や禿(かむろ)をしたがえてのゆったりとした登場です。揚巻には若手の女形の尾上菊之助君。まずは衣装の豪華絢爛さで客席を圧倒させます。花魁のただでさえ豪華な衣装の上からは宝石をちりばめたようなすだれ状の内掛けがかかっていてそれはそれはきらびやかです。若手の役者だけあって化粧のノリもよく、顔立ちもよく、文句なしの売れっ子太夫でした。お伴をたくさん引き連れての登場シーンの解説でおかしかったのは、「一番最後についているのは年期があけても引き取り手のない女郎たちです」という一文でした。客席でコケそうになりました。いや、コケました(^_^;)
彼女たちは主に花魁の衣装替えの手伝いをするのが仕事らしいのです。なんか身につまされるなぁ・・・。
この売れっ子の花魁・揚巻の恋人が色男の助六という設定です。恋人を待つ揚巻の前には、いけすかない金持ちの客の意休というじじいが待ち構えてまして、わざと聞こえるように助六の悪口を言います。最初は客の言うことと聞き流していた揚巻も次第に腹を立てて意休に向かって「いーかげんにして頂戴!!若くて色男の助六さんと意地悪じじいのアンタとでは雪と墨ほどの違いがあるわよ」てなことを格調高い花魁言葉を使って威勢良く啖呵をきります。一見物静かな美女が相手を見据えてポンポンポーーンと啖呵を切る様子はかっこよくて胸がすっきりしますね。
揚巻が怒って店の中に入っていってしまうと、ようやく助六の登場です。
威勢の良い音楽が鳴り響くとともに花道から十一代目海老蔵さんの助六が登場するのが観客の上気にあふれた顔でわかりますが、残念ながら2階の後ろからでは全然見えません。(涙)かなり長いこと踊ってからようやく花道の中央に登場します。さんざんじらされたせいもあり、助六が視界に入った瞬間に私はヤラレました。もーーうその立ち姿の美しいこと。「ねぇ、見た?すごいかっこいい・・・」ととなりの友人をつつく。見てるに決まってるんだけどね。お互いオペラグラスで覗いてるんだから・・・。とにかく同意を求めたかったの。手を取って喜びたかったの、「すごいね」って。
まずはいでたちが粋なのです。『黒羽二重の小袖に綾織(あやおり)の帯、緋の襦袢、折り返した裾回しが浅葱無垢、柑子色(かんしいろ)の足袋に桐柾の下駄』とパンフレットには書かれていました。思わず日本語の奥深さを痛感しましたね。私のボキャブラリーで訳すと『黒地の着物に朱の襦袢、黄色い足袋に高下駄はいて』である。(とほほ)
二枚目ていうのはシンプルな衣装を着れば着るほどかっこよさが際立つものなのかもしれない。黒い着物から赤い襦袢が見えるだけでゾクゾクしちゃうような色気が漂うのです。粋な色気というのは時代を超えても変らないものですね。
伊達男独特の目尻がきゅうっと上がったメイクも素敵でした。
そしてセリフを言う海老蔵さんの声も高めのトーンで滑舌が良くてとても聞き取りやすかった。
顔だけじゃなくて声も二枚目なんだ・・・天は二物を与えたと感心することしきり。
花道では手にした傘を振りながら音楽に合わせて見得を切ります。形も良いけどこの場面の音楽(浄瑠璃)もすごく良くてずーーっと耳に残っています。普段は聞かない音楽なのにすーーっと身体に入ってくるっていうのは・・・日本人だからなのか?前世で見ていたからなのか?自分が江戸時代にタイムスリップしたような不思議な感覚に陥ってました。
幾たびかすっと止まって形を作るたびに「ほうっ」とため息がもれました・・・そして思わず涙もこぼれました。
姿・形があまりに綺麗で泣いた・・・っていうのは過去に「天守物語」というお芝居で坂東玉三郎さんの女役の立ち姿を見て以来です。もう随分昔の話で宮沢りえさんが玉三郎さんの妹役で出ていました。その後でゆっくりと思い出したのは玉三郎さんの恋人役が市川新之助さんだったということ。もう10年くらい前の話ではないかしら?「新之助さんて若いのに堂々とした歌舞伎役者さんなんだなぁ」と思ったことを助六を見ながら同時進行で思い出していて、そして今、成長して海老蔵さんとなったその人を見てあまりの美しさに涙する日がこようとは・・・とこれまた感慨深くて涙。
おっと話が横道にそれ過ぎました。
助六が鳴り物入りで登場すると吉原の花魁たちがやんややんやと集まってきて、好きな男をもてなす意味で次々と吸い付けのキセルを渡し始めます。両手にありあまる数のキセルを渡され「キセルの雨がふるようだ〜」と嬉しい悲鳴をあげる助六。モテる男はつらいねーみたいなセリフがよく似合う人ですね。(笑)落語のネタにもなっている面白い場面です。
その様子を見ておもしろくない年寄りの意休。「わしにも煙草を」と催促すると助六が足の指に挟んでそれを意休に差し出します。(なんて行儀の悪い・・・)と同時にイヤホンガイドの解説が入ります。助六は「友切丸」という名刀を探すためにわざと無礼を働いて相手を怒らせ刀をぬかせようと仕組んでいるのです。
ね、あるとないとでは楽しみの度合いがかなり差が出ると思います。
この物語の奥には父親の敵討ちという筋書きがあるわけですが、あまり説明するとややこしいのでこの辺でぼかしますね。
意休は助六の度重なる無礼をガマンして奥へと入ると、入れ替わりに次から次へとユニークな人物(吉原の客)が現れて、助六の無礼極まる素行にそれぞれおもしろおかしく応えます。
そこへ助六の兄(尾上松録)が現れ、吉原で喧嘩ばかりしているとウワサになっている弟・助六をたしなめようとすると「実は源氏の重宝である刀を探すためにしていること」と説明し、逆に兄に協力を求め、四角四面の真面目な兄に喧嘩を売る指南をします。ここでの兄弟のやりとりがおかしかったです。
喧嘩指南が『またくぐり』という有名な場面に繋がりますが、腰につけている刀を見定めるためにいきなり仁王立ちになって相手の前にたちはだかり「俺のまたをくぐれ」と命令します。助六がなんだか強そうなのでみんなしぶしぶ腰のものを脇においてまたをくぐるのです。海老蔵さんの足は長いので簡単にくぐれるのですが、松録さんはずんぐりむっくりしているのでくぐるほうも、くぐられるほうも困難で格好で笑わせてくれました。この似つかわしくない凸凹コンビの兄弟のやりとりはとてもおもしろくて、なんだか好きでした。
たまたま通りかかった太鼓持ち風の男もまたくぐりを命じられて「ただくぐるだけでは芸がないので」と言いながらオリンピック金メダルの平泳ぎの形態模写をしながらくぐったり、いきなり冬ソナのイントロが流れたかと思うとメガネとマフラーをつけて「ヨン様」に変身してまたをくぐったり、観客を爆笑させるお遊びの場面がありました。
芸達者な方のやられるお遊びの芸は面白いですね。これまた粋でした。
その後、助六の母親が登場して助六の愚かな行為を嘆いたり、再び現れた老人・意休からもお説教されちゃう場面があります。「名刀探しに明け暮れるよりもも兄弟力を合わせて敵討ちをしなさい」と言って去っていく意休の持っている刀こそ探していた名刀「友切丸」だったので再び意休を追いかけるというところで物語は終わりました。ちょっとややこしくて私もあまり理解できていませんが、最初にも言ったとおりストーリーよりも見所なんです。理屈よりも感性で受け止めてってことでしょうね。
最後の見せ場は花魁・揚巻と助六がふたり揃って見得を切るシーンです。美男・美女が大見栄を切る姿はまさに「絵に描いたような」「錦絵から抜け出たような」美しさでした。
あっ!大ラスに海老蔵さん、菊之助さん、松録さんの3人の大見得がありました。若手役者3人の並びもよかったけれど、オペラグラスではなぜか美男・美女の二人にトリミングされてました。
すみません(^_^;)
終演後に友人たちとひとしきり海老蔵さんについて語ってしまいました。
役者はやはり姿・形が良い方がいいよね。実力も兼ね備えているから強いよねー。声もよかったよねー。と褒めることばかりでした。
これだけの舞台を見せてくれるのなら、私生活では何をしてくれても結構です。ということで我々の意見は一致して楽しい夜が終わりました。
歌舞伎ねぇ・・・ハマるの怖かったんですよねーー。